夏空

□第5章
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ね、眠い…。




ガタンゴトン、という電車の揺れがもう…。




「佐江ちゃん?」

「…え?」

「どうしたの?酔っちゃった?」

「ううん!俺、乗り物酔いしないから!あはは!」



…酔ってはいない。

ただ…。

眠い。すっごい眠い。





この前、玲奈の家で予想もしないタイミングでご馳走になった。

その別れ際に玲奈と遠出する約束をした。

2人で勉強したりする日も多かったけど、合間にはどこに行こうか?って話をしてた。




キスも…あれからたまにするようになった。

や、やっぱり2度目のキスは玲奈からしてもらったのは男としてのプライドが…。

というのは言い訳だけど…単に俺が玲奈とたくさんイチャイチャしたいだけ。

別れ際だとまだ明るいし、この前みたいには出来ない。

だから、俺の部屋から出る前に玄関でちゅっとしたり…。

付き合ってるのにそれだけ?って言われそうだけど、これでも俺たちには精一杯。

それに玲奈の家に送っていく前にキスをすると、自然と手を繋げるし、何となく玲奈も嬉しそう。

キスが目的じゃないんだよな、ってつくづく思う。

何となくだけど、キスすると心が更に強く結ばれる気がする…なんてことは恥ずかしくて言えないけど。







そして今日がその遠出の日。

玲奈はすごくニコニコして手作りのお弁当だかを持ってきてくれた。

もうそれだけで舞い上がっちゃうよね!

…と言いたいところなのだが…。





俺は前の日に興奮し過ぎてしまいました。

結果、なかなか寝付けず。あまり睡眠時間もとれないまま出てきてしまった。




玲奈は電車に乗った途端に興奮して、あれこれ説明をしてくれてるんだけど…

話題そのものに興味がないせいか、話を聞きながらウトウト…。




「佐江ちゃん?もしかしたら眠い?」

「…ふぇっ!?そんなことないよ…大丈夫」

「もしかしてこんな話はつまんないかな…?」




玲奈が悲しそう。

ああ、違うんだ、玲奈。

これは俺が前の夜にあまり寝てなかったせいで…。




だけど!

今日は待ちに待ったちゃんとしたデート!

考えてみると2人でちゃんと約束したデートってあまりなかったんだ。





寝るなんて時間がもったいないし、玲奈といられるんだからたくさん話したりしたい…。




「さ、佐江ちゃん?」

「うん…?」

「大丈夫?その…無理矢理目を開けているような顔になってるけど…」

「そう、かな…」





ああ、ダメだ…。

玲奈といる安心感と、電車の揺れで…。


頑張って支えている首もがくんともたれかかって…。






いつの間にか目を閉じていた…。
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