夏空

□第4章
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「えー。本当に?それって玲奈だけじゃないの?」

“ちっ、違うもん!…もう、佐江ちゃんの意地悪”

「あはは!冗談だよ!全く玲奈は真面目だなあ」

“佐江ちゃんが不真面目なだけですー。ふーんだ”

「あれ?怒っちゃった?」

“つーん”

「はあ…そうか…ごめん、俺って彼氏失格だよね」

“え?ち、違う…”

「玲奈にはもっと優しい彼氏がいいんだよね?…俺、ショックだなあ」

“そ、そんなことないよ?佐江ちゃんが…いいの”

「俺のこと…好き?」

“…ふふっ…好き、だよ?”

「俺も…玲奈が好きだ」

“もう…ふふふっ”

「あははっ」

“…あ、はーい。ごめんね?お風呂入れって…”

「あ、そうか。ごめんな?長話で」

“ううん!私だって佐江ちゃんとずっと話してたいよ?あーあ…切りたくないな”

「じゃあ、寝る前にまたメールとかしよう?」

“うん!…ありがとう、佐江ちゃん。じゃあまた後でね?”

「おう。気にせずゆっくり風呂入ってきていいからね」






電話を切る。

…ヤバい。何がヤバいかと言うと…






「今の俺がヤバすぎる…」




何なんだよ、今の甘い会話!

あんな会話をしているカップルなんてよー、とか思ってたのに!

そんな…ば、バカップルに…!





「なってしまったのか…」



思わず枕に自分の顔を押し付けてしまうけど…



「くっ、だが、後悔はしていないっ…!」



バイト先でもにやけてしまってからかわれたり、冷ややかな目で見られたり。



学校でもすぐに玲奈の所に行きたくて前よりも授業は上の空だけど…。

一番変わったことがある。




「…玲奈が風呂上がるまでに少しでもやっとくか」



机の前に座る。

教科書を広げた。

そう。この俺が勉強を頑張っている。

三年の今から?なんて馬鹿にされるかもしれないけど…。




玲奈は結構頭がいい。

進路だって前なら俺は関係ないなって思うレベルの大学。

だけどこの前帰り道…。




「佐江ちゃん…無理にとは言わないけど…同じ大学行きたいな」

「え?でも玲奈の行く大学って…俺には絶対無理だと思うけど…」

「ううん、佐江ちゃんは頭は悪くないと思う。ね?一緒に勉強しよ?」

「お、おお…」





最初はあまり乗り気じゃなかった。




だって本当に勉強は嫌いだし…この高校に受かったのだってめちゃめちゃ勉強したからだった…。
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