夏空

□第3章
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あれから数日が過ぎた。

放課後に松井さんがやってくる…ということもなくなった。


さすがに周りのやつらも



「どうした?最近彼女来ないよな?」

「もしかして振られたとか?」



なんて茶化していたけどそれにも飽きたのか、何も言わなくなった。



「なあ、佐江…。玲奈と何かあったん?」



こいつ以外は。



「何かって…何か聞いた?」

「うちが質問しとるんやけど…まあ、ええか。受験勉強あるから別々なんだとか言うてたけど…」

「そうか…」

「…また何かしたんか?」




ジロッと睨んでくる山本。

俺は大げさに溜め息をついた。





「あのなあ…何でもかんでも俺のせいにするのは…」




そう言いかけてふと思い出す。

いや…俺のせいだよな。きっと。

俺がどっちつかずで迷っているのが出ていたのかもしれない。

完全に好きだとは言えないのに付き合ったから…。






「…どした?途中で言うのやめてから…やっぱ何かあったん?」



さっきの責める調子とは違う。

今度は心配しているのかな?





…松井さんは山本に事情を説明したくないんだろう。





あの日の松井さんの言葉。

俺と山本との方が気が合うんじゃないかと言ったこと。

何故告白をOKしたのか?と聞いたこと。

その全ては…いくら山本が親友でも本人には言えないだろうな…。





「あのさ、山本」

「うん」




山本は途端に真剣な顔になる。




「今は俺の口からも何も言えないんだ…だけど、心配しないでくれるかな?」

「あ…うん、分かった…」



恐らくちゃんとした理由を説明してくれると思ってたんだろうな。

あからさまにがっかりした顔をさせて申し訳ないけど…。


松井さんが言えないことを俺が言うわけにはいかないよ。




「じゃあ、俺…今日はバイトだから」

「うん。頑張って…あ、佐江」

「ん?」




行こうとした俺を山本は呼び止める。




「近いうちにお店に行かせてな?…玲奈と一緒にでも」

「…ああ、また誘うよ」




松井さんと一緒にか…。

そんな日は来るのかな…。

もう松井さんは俺と話してはくれないかもしれないのに。





そのままバイト先へと向かった。
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