こいのうた

□第十章
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「…で、最近そんな感じなんや?」

『そういうこと』

「ふーん。でも陽菜的にはラッキーって感じ」

「それを言うならみるきーちゃん的にもラッキーやで?んふ」

「ちょっとー!勝手に陽菜の佐江ちゃんに抱きつかないで!」

「小嶋さんの佐江ちゃんちゃうやん」

「陽菜もぎゅーっ!だもーん!」

『…く、苦しい』



今は部活の終わり。

ユニフォームが泥だらけだろうが汗だくだろうが関係なくひっついてくる2人。

そして何の話をしていたかというと…。



「それにしても前田さんが近寄ってこんのはありがたいわ」

「言いたくないけど陽菜のライバルだしー」

『あはは…』




そう。あの日以来、あっちゃんとは殆ど話してない。

話すことと言えばどうしても必要なときだけ。

それもあまりないんだけど。

席が近いからプリントをまわすときとか…。



「それに柏木さんも転校していったしなあ…」

「ほんとー。いつの間に転校したんだろ?」

『いや、お別れ会やったでしょうが…』



ゆきりんは地元の高校の入学に合わせるために転校していったんだ。

既に受験は終わっていて進路も決まっての転校だったけど…

寂しいってすっごい泣いてたな…。

何故か優子も才加ももらい泣きしてたのはいまだに理由がわからないけど。

いや、2人ともすっごい涙もろいから仕方ないけど。



「佐江ちゃん、ゆきりんと2人で最後に何を話してたのー?」

『え?ああ、メールするから返事ちょうだいねって言われたんだ』

「そうなんや。でも離れているんだからメールくらいは許したってもええかな〜」

『なんでみるきーが偉そうなんだ…』






ゆきりんはそれからこっそり耳打ちしてきた。



「ねえ、佐江ちゃんは前田さんとは付き合わないんでしょ?」

『たかみないるしね…』

「じゃあ、もしもこれから先も彼女が出来なかったらまたデートしてね?」

『ああ、うん…』

「だけど…」



ゆきりんは暗い顔をする。



「佐江ちゃんは素敵な人だから、たくさんの人から愛されてるからすぐ恋人が出来そう」

『どうだろ』

「次に会う時は俺の彼女なんだ、って隣にいる誰かを紹介されそうだよね…はぁ」

『いや、あの…まだどうなるか分からないことで悩まれても…』




そんな会話のことは内緒。

そしてゆきりんは地元の鹿児島へ戻り、あっちゃんとは距離を置いた関係。



今はみるきーとにゃんにゃんに両側から抱き締められ…



やがて玲奈が帰ってくる。

あれから何年会ってないっけ?3年?




俺はもうすぐ高校生になる。
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