こいのうた

□第二章
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すっと制服に袖を通す。






「採寸したのはちょっと前だけど…大きめに測っておいて良かったわねー」

「そうだなあ、佐江はお父さんに似てこれからも背が高くなると思うぞ?」

『うん!佐江…じゃなくて、俺、頑張ってもっと背が大きくなりたい!』







いよいよ今日は入学式。

小学校の高学年から背がどんどん伸びだしたからもしかしたらまた制服を買わないといけないかも。

そんなことをお母さん達が話している。

部活はずっとサッカーをやっていたけど中学ではどうするかはまだ決めてない。

でもスポーツを続けるならやっぱり背は高いほうがいいと思う。







「玲奈―、おいで?お兄ちゃんかっこいいわよ」







お母さんがニコニコして玲奈を呼ぶ。

あれ?玲奈はどこにいるんだろう?

キョロキョロしていると…







『うわっ、そ、そこにいたのか!』

「ご、ごめんなさい…」







何故謝るのか分からないけど、玲奈は柱の陰に更に隠れる。

でもお母さんに連れられて目の前にやってきた。








「わぁ…かっこいい…」

『そ、そうかな?』








何だか顔をぽーっと赤くして両手を胸の前で重ねた妹に言われるのはとても恥ずかしい。

玲奈も最近は元気になってきて、激しい運動は無理だけど普通に外に出て遊ぶ事も増えた。

どうやら友達も出来たらしい。








「玲奈もお友達と遊びたかったら連れてきてもいいのよ?」

「うん、お父さんも玲奈のお友達に会ってみたいなぁ」

「…お兄ちゃんも?」

『え?あ、うん…連れておいでよ』







すると玲奈はぱあっと嬉しそうな顔をしたけど、すぐに真面目な顔になる。









「あのね…でも…」

『うん?』

「皆ね…可愛いの…」

『…うん?』

「ううううー、玲奈よりも可愛いのぉおおおおっ…ちゅーん…」

『えっ。どうした!?』








頭を抱える妹の姿に女の子は分かりにくいとしみじみ思って…思い出した。
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