銀の花

□第九章『舞台の準備』
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「ねえねえ!陽菜ちゃん!お願い!」

「えーっ!陽菜、聞いてないー!」

「頼む!一回でいいから!」

「やだー!」

『…何だか誤解されそうな会話だな』




思わず呟いてしまう。



そう、あれからオーディションを開始したのだけど…。



「陽菜ちゃーん!俺と共演しようぜー!」

「やだぁ!佐江ちゃんの相手役って聞いたのにぃ!」

『それは言ってないけどね…』




玲奈さんが陽菜ちゃんが綺麗だ、可愛いって騒ぐから一応声をかけたんだけど…。



『陽菜ちゃん…まだ主役はどうなるかは白紙だよ?』

「えー!騙されたぁ!」

『騙してないでしょうが…』

「だってだって!佐江ちゃんの相手役だと思ったもーん!」

『それはまだ決まってなくて…』

「佐江ちゃんとキスシーンがあるって思っていたもーん!」

『それは誤解だ』

「おまけにベッドシーンもあるってー!」

『誤解だ。とてつもなく誤解だ』




玲奈さん…本当にこの人もオーディションに参加するんでしょうか?

そう思って玲奈さんを見る。



しかし。



「ああ、陽菜ちゃんは本当に美人だよねぇー…」

「ほんと?…否定はしないけどぉ。ふふーん」

「うんうん!その美貌を隠しておくのは絶対にもったいないよ!」

「えー、何となく思ってはいたけどぉ…」

「ああ、もう!出演しなくても私の見えるとこにいて欲しいよぉ…眼福…」




演技はもはや関係ないような気がする…。

あいりん先輩は…




「…ああ、美女にデレてる玲奈さん、可愛すぎ…ハァハァ…」




ダメだこりゃ。


それはいいとして。(良くないけど)

オーディションは色々な人たちが参加してる。

何とサークルの人間じゃない人たちも。




「やっぱり宮澤くんの吸引力ですなぁ…ふふふ」

『あいりん先輩…でも男も結構いますよ?』

「それは小嶋さんですな」

『陽菜ちゃん?』

「ええ、そりゃあの目立つ美女が参加すると聞いたらお近付きになりたい青年達がわんさと…」

『そうなのか…』

「ふっ…これで注目させるための第一弾は完了、と…」

『え?』

「何も言ってませんよ?」




いいえ、あなた何かたくらんでますよね?



今すっごい黒い呟きが聞こえたんですけど!
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