銀の花

□第八章 『2人だけの時間』
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何もかもが信じられなくて夢みたいだった。



「佐江ちゃん…ね?」

『うん…』



ボディソープが由紀の胸の谷間をとろっと滑っていく。

そこに手を伸ばして…


「あん…」


すごい。ぬるっとした感触と、すべすべした肌。

指先でそっとなぞると、それに応えるように聞こえる由紀の声。

頭がぼーっとするのは目の前の光景のせいなのか、浴室だからか…。

両手で夢中で豊かな乳房をすくい上げて、揉みしだいて…。



「佐江ちゃん…んっ、激しいね…」

『…あ、ごめん…痛い?』

「ううん…佐江ちゃんに触れてもらって嬉しい…」

『そうか…俺も嬉しい…夢みたいだ』

「なんで?おかしいこと言うんだね?」



本当におかしそうに笑う由紀。

でも俺にはおかしいことじゃないんだ。



『いや…だって最近なかなか会えなくて…会えるだけでも幸せだと思ってて…』



最近は顔を見ようと思ったら、TVに雑誌にネットに…。

でも目の前でリアルな恋人の由紀を感じられることはない。



『でも今はさ…お互いに裸で風呂場にいるのって…なんか…』



説明している途中で何だかおかしくなってきた。



『あはは…あははは!』

「さ、佐江ちゃん?どうしたの?」

『だ、だってさ…あはは、素っ裸で向かい合ってて真面目にこんなこと言ってる俺が間抜けすぎるなあって…』

「もう…佐江ちゃんってムードがないんだから…ふふふっ」




呆れたようにたしなめられたけど、結局一緒に笑いだした。

笑って、抱きしめて…キスをした。



「…んっ、佐江ちゃん…」

『由紀…可愛い』

「きゅ、急に…どうしたの?」

『皆に言われ慣れてると思うけど…言いたくなった』

「…言われてないよ?逆に何であんな可愛くない子が、とか言われてるんじゃないかな

『そんなのはアンチだけだろ』

「そうだね…悪く言われるのも注目されてるから。人気があることのバロメーターだねっ」




何故だろう。

こんなに近くにいるのに。

ぎゅうっと強く抱きしめた。

由紀がどこかに行ってしまう気がして。




「どうしたの?…佐江ちゃん、元気がない…?」

『いや…抱きしめたくなっちゃったんだ』

「いつだって佐江ちゃんには抱きしめて欲しいよ…ねえ、もっと」




互いが裸であることも忘れてぎゅっと抱きしめてると…



「あ…」

『…ん?』

「あの…その…」



由紀が何故か伏し目がちにもじもじしだした。
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