銀の花

□第七章 『戸惑い』
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「あの…宮澤くんですよね?」

『はい?そうですけど…』



大学に入るとすぐに知らない女の子たちから声をかけられた。

優子が目の色を変えて騒ぐ。



「お、おい!佐江!誰だよ、この子たち!」

「落ち着け、優子…」

『ありがと、才加…いや、俺も知らないんだけど…』



鼻息が荒い優子を押さえる才加に誰か分からなくて戸惑う俺。



「やっぱり!」

「そうだよね!見た事あると思ったもん!」

「どどど、どうしよう!」



話しかけてきたのに目の前で大騒ぎなのはどうなんでしょうか…。

どうしようもなくて、困っていると、



「あ、あの!これ、みました!」



ずいっと差し出される雑誌。

あ、これは…。




「いつも見てるんですけど!すっごいかっこいいモデルさんがいる!と思って!」

「同じ大学の人だって誰かが言ってて…」

「そ、それで…」



更にマジックを出してきた。



「サインしてください!」

『…ええええっ!?さ、サインとか…芸能人じゃないし!』



しかもこれは本職の人の代打で出ただけで!

優子と才加がニヤニヤしてる。



「佐江―、いいじゃん!サインしてやれよー」

「まあ、断る理由はないよな」

『お前ら…』




他人事だと思って…とは思うけど、目の前の子たちがあまりにも頼むので断るのは申し訳なくなってきた。



『ええと…名前を書くだけでいい?』

「は、はい!」



マジックを借りて、キュッキュッと名前を書く。

“宮澤佐江”と…。




改めてグラビアを見ると、彩ちゃんとの撮影の様子が思い出された。




最初は緊張したり、恥ずかしがったりしてたけど、彩ちゃんのプロ意識を見て影響を受けた。

由紀とこの前会った時もTV局の一件で、改めて由紀のことも尊敬しなおした。

俺も何か人にいい影響を与えられるのかな。




『はい…これでいいかな?』

「わっ!あ、ありがとうございます!」

「写真、いいですか!?」

『え、まあいいけど…ええっ?!』



女の子たちに囲まれて腕を組まれた。

ちょちょちょ…!



「はーい、撮るよー!」



優子がものすごい変わり身の早さで携帯を構えてる。



「ありがとうございましたー!」



女の子たちが騒ぎながら去っていく…。


「佐江…お前の顔、死んでたぞ…」


優子の呟きに力なくうなだれた。
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