銀の花

□第四章 『束の間の安らぎ』
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スマホでぼんやりと動画を見ている。









するとそこに覗きこんでくる顔。







「おっ?…これ、さや姉じゃん!」

『え?ああ、優子知ってるの?』

「当たり前だろ!アイドルからアーティストへ…って転身したのはまだ最近だけどな」

『へー?アイドルだったの?』








そうは見えなかったなあ。

何だか突っ張っているというか…アイドルでフリフリの格好をして、笑顔を振りまいてってタイプには見えなかった。







「ところで…お前、さや姉のファンなの?」

『え?いや…』

「あーあー!ゆきりんに会ったら言ってやろー!他の女の子の動画に見惚れてたってー!」

『ば、馬鹿!違うって!…この前初めて知ったっていうか会ったって言うか…』

「…え!な、何!?さや姉に会ったのか!?嘘っ!俺も会いたい!会わせてー!」

『だああっ!鬱陶しい!』








優子が思い切りジャンプして縋ってくるのが本当に鬱陶しい。

すると才加がそこに割って入る。









「おお、あのバイトどうだった?結構大変だったろ?」

『ああ、うん…でも仕事って最初はどこでも何でも大変だと思うし大丈夫だよ』








まだ飛び跳ねる優子の頭をぐっと押さえながら安堵した表情の才加。







「それならこっちも安心だな。紹介した手前どうだったかなと気になっていたんだ」

『本当にありがと。色々と勉強になる上にバイト代をもらえるなんてありがたいよ』

「なあなあ!俺もさや姉に会いたい!いいなあー、なんで俺に紹介しないんだよ!ゴリラ!」

「なっ!ゴリラとか言う奴に紹介するか!」








才加と優子のバトル漫才が始まった。



元気だなあ…。

こちらはバイト三昧の日々でちょっと疲れてるけど…。





ふと携帯の動画にもう一度目を落とす。




すると才加に首を締められている優子が顔を真っ白にしながら、






「うぐぐ…本当にさや姉って可愛いよなぁ…」

『優子は本当にこの子が好きだよな』

「まあな!」







才加の腕を振りほどいて何故か偉そう。







「でも同じグループから卒業したアイドルの子でもう一人、俺のお気に入りがいるんだけどね!」

『へえ…』







ごめん。あまり興味ないです。
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