銀の花
□第三章 『違う世界』
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『よしっ!じゃあ早速やってみようか?』
「は、はい!よろしくお願いします!…宮澤、先生」
『せ、先生?あははっ!なんか照れるね』
手の持ったサッカーボールをポンポンと放り投げて思わず笑ってしまう。
そう。今日は家庭教師の初日。
そして家庭教師の内容と言うのは…
『え?サッカーですか?』
「そうなんです。今度クラス対抗試合があるとかで…結構運動神経はいい方みたいなんですけど」
小嶋さんのお母さんはそう言って真子ちゃんを見る。
「ちょっとサッカーは苦手みたいなんです。でも誰かに習うと言っても本格的にされていた知り合いもいなくて」
『いえ、あの…僕も本格的ではないんですが…』
確かに遊びでならやったことあるけど…どちらかというとバスケなら教えられる。
運動神経のいい人がいないだろうか?ということでうちの大学の知り合いに頼んだとか。
それで急いでサッカーの基礎の教本を図書室で借りてきて頭に叩きこむことにした。
そこまで本格的じゃないなら適当でいいのかもしれないけど…。
『じゃあひとまず簡単なとこから…』
小嶋家から近くの公園でサッカーボールを蹴り合う。
『パスを受ける時はそのまま受け止めるんじゃなくて、足の裏でまずは止めてから…』
軽く蹴ったボールを止めてくれる真子ちゃん。
「あっ!と、止まった!」
『おおっ、うまいねー!』
…何だろう。公園で子供と遊んでる父親の気分だ。
そのまま何度もパスを繰り返す。
後は狙ったところに蹴られるように色々とアドバイスをするけど、やはり運動神経がいいんだな。
『真子ちゃん、覚えが早いね?それに実践出来るのは大したもんだよ』
「そんな…でも褒められると嬉しくて頑張っちゃいますね」
うんうん。可愛いな。
年下で実年齢よりもっと下に見えない事もないからか、妹っぽい感じだよな。
俺には妹はいないけど、もしもいたらこんな風に遊んであげたんだろうか。
一時間ほどやるともう基礎的な事は教える必要もないくらいに上達したような気がする。
するとそこへもう1人やってきた。