銀の花

□第二章 『新生活』
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大学に入ってからの毎日は慌しい。

勉強はもちろんだけど、サークル活動にバイトに…とにかく忙しい!






「なあ、佐江?」

『んー?』






親友の才加が神妙な顔をして近づいてきた。

今は講義が終わってテキストを片付けているところ。






「あのさ、お前、バイトを増やしたいって言ってたよな?」

『ああ、うん。増やしたいと言うか…この前までやっていたのは期間限定だったから終わっちゃってさ』






そう。学費の仕送りは受けているものの、家賃や生活費などは稼がないといけない。

サークルは演劇。それは将来、脚本や演出を手がけたいと言う思いから。

役者の方を薦められるけど…それよりも裏方がいいんだよなあ。

どちらにせよ、自分の楽しみを貫くにはお金がかかる!







『え?もしかして何かいいバイトあるの?』

「うん、俺も薦められたんだが別のバイトが決まってしまってな」







残念そうな才加。高校時代からの親友で大学も一緒で心強い仲間だ。






「ほら、前にテレビ局の裏方の仕事も見てみたいって言ってたろ?ADというか手伝いなんだけど」

『え!マジで!?やりたい!』







思いがけない内容に喜びを隠せない。

大変だって言うのは聞くけど、これから先、自分が進む道に必ず役立つだろうから。

すると才加はホッとしたような笑顔を見せる。






「そうか、良かった!いやあ、お前が駄目なら他の誰かにあたろうと思っていたんだ」

『もちろんやりたいよ!ありがとう、才加!』







新しいバイトが決まった上に、自分が興味ある業界の1つ。

良かった良かった…。

色々と安堵するし楽しみに気持ちが躍る。



今日はもう1つバイトの面接があるからそろそろ行かないと。

腕時計を見て時間を確認する。




俺が行こうとしたのがわかったのか、才加がそっと耳元で小声で尋ねてくる。







「なあ…ゆきりんとは連絡を取ってるか?」

『…うん、まあまあ』







思いがけない時に由紀の名前を出されて少し動揺。






由紀…。





あの時の雪が舞い散る暗い空と、由紀の涙が思い出される。
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