銀の花

□第一章 『夢の始まり』
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由紀と知り合ったのは高校に入ってすぐだった。



最初からもちろん好印象だったし、向こうは人見知りが激しかったみたいだけど、俺にはよく話をしてくれた。

何人かのグループで仲良く過ごして、友情だの恋だのの区別もなく。





そして、そのままの関係で卒業も近い…そんなある日のことだった。







「ね、佐江ちゃん?今日時間あるかな?」

『おう、いいよ。どっか行く?』







いつものことだ。きっと何人かでどこか行こう、何か食べに行こう…

そんなノリかなと軽く考えていた。








だけど…













『どうしたー?ゆきりん?』

「あの…ごめんね?こんなところに」






俺は正直戸惑っていた。

だって…呼び出されたのは人気のない教室だった。

皆は?これってドッキリ?

何となくそわそわする。







いつも皆で楽しくやっていた、そのメンバーの1人。

そんなゆきりんが…由紀がもじもじしているのがすごく可愛く見えた。







「佐江ちゃん…私、ずっと佐江ちゃんを好きだったの…」






ドキドキしていた胸が最高潮に高鳴る。

本当に?俺を?ゆきりんが?







「最初にかっこいいなって思ってて、話したらすごく優しくて面白くて…」

『いや、そんなことはないけど』








ああ、こんなときもこんな受け答えしか出来ないなんて。

だけどそのまま続けてくれた。








「ううん、だけど仲良くなって、関係を壊すかもしれないからどうしようって悩んでいたんだけど…」








じいっと俺を見つめた、その瞳を見つめ返す。








「もう大学へ進む時期になったから…このままじゃ嫌だって思った」






深く息を吸い込む。






「私と付き合ってください」








俺の答えは決まっている。








『俺の方こそよろしくね?俺も前から好きだったんだ』






そう言うとオーバーリアクション気味に目を見開いて、口を手で押さえる。

そんな君も可愛いな。








「佐江ちゃんっ…!」

『ゆきりん…由紀って呼んでいい?』

「ふふっ…そう呼んで欲しいな…」










飛び込んできた彼女を抱きとめた。


絶対に離さないと心に誓ったんだ。
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