ワンモアタイム

□第8話 『愛』
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「ねえねえ…」

『…ん?どうした?』

「いやいや、どうした?じゃなくてさー」






お願いだから聞かないでください。







「今日のくーみんってさあ」

『珠理奈?次の授業って数学だよね?宿題なんだけど…』

「絶対に何か変わったよね?ね?」

『数学って公式を覚えるだけなのに難しいよなあ』

「名前ちゃーん…分かって話を逸らせてるよね…?」








そうですか?私はいつも通りですが何か?








「ねー、何かさ…くーみんと…あったの?」

『…そんなことないよ』

「でも…動揺してるよね?」

『なんで?』









珠理奈が私の手元を見る。

私も見る。









『あ…』

「数学の話をしてるのに出してる教科書は古典だよね…?」

『ちょっと間違えた…』








珠理奈はニヤニヤとしながらこちらの顔を覗きこむ。








「くーみんと…しちゃったの?」









ガタタタ!と音を立てて手に持った教科書達が滑り落ちていく。

周りがこちらに注目するのがちょっと気まずい。





チラッと久美を見ると、玲奈と話している…けど、目が合うと真っ赤になる。










「いひひひー!やっぱり?ねえ、やっぱり?」

『珠理奈…少しこのお口を閉じなさい』

「えー、なんで…むむむむっ!ぐぐぐぐっ!」










ニヤニヤしている口元をぎゅっと摘むと珠理奈がジタバタし始めた。



うん、何だか動きがとっても面白い。








『口を尖らせてバタバタしてるとひよこみたいだなあ』

「むぐーーーー!」

「な、何をやってるの?」








馬鹿な事をしているとちゅりがやってきた。


珠理奈が苦しそうにしているので、ようやく離してやる。
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