ワンモアタイム

□第5話 『告』
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家に着いて、玲奈を玄関に招き入れる。






『どうぞ。あ、スリッパ出すね』

「う、うん…お邪魔します」

『玲奈が1人で来るのは初めてだよね?皆とは来た事あるけど…』

「うん…なんか緊張しちゃうね?ふふっ」

『えー?今更緊張なんて玲奈らしく…あるか』

「そうだよー、人見知りであがり症なんだからー」







そういえばそうだ。

友達と2人きりで遊ぶとかもあまりないって言っていた。

なのに、わざわざ私と話したいって…よっぽどな相談があるんだろうな。






玲奈には部屋に入っているように伝えて、お茶を持っていく。








『お待たせ!あ、座ってて良かったのに』








玲奈は立って部屋を見渡していた。

遠慮がちな玲奈らしい。








「あ、わざわざありがとう。お母さん達は?」

『あー、まだ仕事から帰ってないね?遠慮しないでゆっくりしてってよ』

「う、うんっ!いただきます」








玲奈はいつもみたいに両手で抱えるようにお茶を飲む。

こっちの玲奈も向こうの玲奈と変わらない。





…まただ。





こちらに来てから知らず知らずに比較する癖がついた。



人は特に変化はない。

極端に性格が違うとか、共有する思い出が違うとかもない。






ただ、私がこちらに来た数日前後は微妙に違うみたいだけど。



あの落ちた日も当日確認したら、私は勝手に1人で帰ったと言う。

そんな事実は記憶にないけど、こちらの私の行動としてもかなりおかしいらしかった。

ということは…私がこちらにやってきたことが原因で、もう1人の私が不自然な行動を?

…頭がおかしくなりそうだし、痛くなってくる。







それにもう1人というなら、そのもう1人の私はどこへ行ったのか?




あのおかしな声の主に聞きたい事はたくさんあるけど、どうしたらまた話せるのかもわからない。






多分、今度話せるとしたら…







「…ど、どうしたの?」

『…え?あ、ああっ、ご、ごめん!何?』

「う、ううん…私をじぃっとみたまま、何か考えているみたいだったから…」

『あ、ごめん…』

「あ、別に謝らないでいいからね!?…ただ、名前ちゃんに見つめられると…恥ずかしいよ」







あ、そうだった…仲良くなったから忘れていたけど、玲奈は極度の恥ずかしがりだった…。







『そうだったね…玲奈は人に見られるのってあまり好きじゃないのに、ごめんね?』

「…ううん。それも違うけど…」








何だろう?何が違って何が正解なんだろう?




…分からなくなってきた。
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