短編集A

□同窓会
1ページ/61ページ




佐江Side





久しぶりの同窓会。

それ自体は開催していたらしいけど、佐江はなかなか来れなかった…。

高校を卒業してから、スポーツ推薦の大学へと行く手もあったけど、いち早く社会人になりたかった。

それもあって、実業団から声がかかったので、すぐに飛びついたんだ。








「あー!佐江―!」









心友の優子が声をかけてきた。久しぶりに会えて気持ちは上がる。

高校時代はバスケの相方だったし、何でも話せる関係だった。







「よっ、優子!久しぶりだね!」

「全くさー、全然顔を出さないんだもんなー。皆寂しがってたよ?」

「いや、練習やら試合やら…忙しくて」

「だよなあ〜、新聞とかニュースでも顔や名前は見たり聞いたりしていたけど…」









そこで優子は言葉を止める。

ニヤッとして、周りに目線を配る。








「ほらほら、久しぶりに登場した有名人に皆キラキラしちゃってるよー?」

「え?あはは…珍しく来たなーって目じゃないの?」







そう言いながら何となくまわりに目をやると…


え?誰?



皆着飾っていて可愛いし、綺麗だし、大人っぽくなったなーって子もいる。







だけど…








「優子…あれは誰?ほら…」

「え?…うんー?綺麗な子だけど…あんな子いたっけな?」








じっと見ていると…ほら。

ちらっと見ては目を逸らして、また見ては…を繰り返している。

そして佐江と目が合うと慌てて逸らす。



その耳は赤くなっている。



色白だから赤くなると分かりやすい。

なんだろう。気になる。








「なあなあ。今って彼女いないんでしょ?」



優子が小声で言う。

「ああ、うん」とか何とか曖昧な返事をする。







「ほらほら、色んな子達が佐江を見てるよ!ああ、いいなあ、選び放題じゃね!?」

「んー、なんか…ちょっと行ってくる!」

「おお、積極的!いってら〜」






そのまま立ち上がって席を移動する。




周りが目で追ってくるのが分かるけど…あの子が気になる。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ