短編集A

□プラトンの半球体
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陽菜 Side





『ごめん…もう無理』

「そんなこと言わないで!ね!あの子は遊びだから!ね?」

『優ちゃんの言い訳は聞き飽きたよー…』

「陽菜の事は本気なんだ。何があっても失いたくない」

『じゃあなんで…』







浮気するの?それは何度も繰り返された会話。

友達が言っていた。

「浮気は病気だから治らない」って。

優ちゃんは同じことを何度も言う。








「あの子は友達なんだ!」

「友達が困っているのを見捨てるような冷たい彼氏は嫌だろ?」

「陽菜は俺の彼女だから分かってくれるよね?」








うん、分かってるよ。優ちゃん。

でもね…陽菜は友達とホテルとか行かないの。

そして、皆から見られる場所でキスしたりもしないの。








『もう駄目だよ。おしまい』

「え!ま、待って!俺、もう陽菜以外の女と会わないから!ね!?」

『その会話はもう何度もやったから飽きちゃった』

「お願い!もう一度!ね!」








あれだけ好きだった優ちゃん。

かっこよくて頼り甲斐があって、優しくて面白くて。

でもそれは陽菜だけの恋人としてじゃなくて、他の人に対してもそうでありたかったんだね?








「…な?頼むよ、陽菜…」

『優ちゃん…』








そう。こんなときだけこんな目をするの。

思わずまた『うん』って言いそうになる。







だけど…







『もう、無理なの。さよなら』

「え!ちょ、は…!」







もう後ろを向くこともなかった。



優ちゃんも陽菜がいつもと違うことがわかったみたい。







何故、こんな人をずっと好きだったんだろう。

涙が出そうだけど…それよりもこんな自分が馬鹿みたいで呆れてしまった。





もう、違う方向を見ないとね。
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