短編集A

□嫉妬
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<拍手SS 『嫉妬』>







佐江ちゃんが座長を努めた舞台が終わった。


私もTwitterで宣言した通り、見に行けたし、すごく刺激を受けた。





そんな佐江ちゃんに思いを伝えて写真を撮ろうとしたけど…










「もう、佐江ちゃん、唇尖りすぎー」

「あはは!ゆきりーん、本当は嬉しいんだろー?」






男の子の役をやって、髪をばっさり切った佐江ちゃんはすごくかっこいい。

かっこいいし、経験が浅い若い子達を引っ張っていく彼女は皆の憧れ。

稽古中もプレッシャーに負けそうになって泣き出したり落ち込んだりする人たちを元気付けていたみたい。







そして今日は久々に会えてたくさん話したいって思っていたのに…。







偶然にも同じ日にやってきた柏木さんとずっと話している。






今回はあまり写真を撮ってない、って言ってたのに何枚も撮っているのがもやもやする。





どうしようもない気持ちでいると…あ、谷だ!






『まりちゃーん』

「ああっ!玲奈さん!ふふふ、谷に会いにきたんですね!?推しの谷に!」

『久しぶりだよねー!会いたかったよぉー』






可愛がっている谷に会えて嬉しいのと、佐江ちゃんが気にしてくれないかな?って気持ちも半分。





だけど、佐江ちゃんは…





「今度はこれこれ!」

「ちょ、佐江ちゃん!それやりすぎだってば!」






相変わらず柏木さんと楽しそう。








「玲奈さん?宮澤さんに御用ですか?なんなら、この谷があのお2人に割り込んでまいりますが!」

『ええ?い、いや、大丈夫…佐江ちゃんにはちょっと色々聞こうと思った事があったけど後ででいいや…』







柏木さんと話していると思ったら、なーにゃやみこってぃ、他のグループの研究生の子達…。

色んな子達に懐かれて頼られている佐江ちゃんはすごく頼もしい。

イケメン!とか言われて一緒の撮影に応じている様子は本当に決まってる。





さっきは私と話していた谷だって、





「宮澤さん!谷と写真撮りませんか!?」

「ええー、谷とはこの前撮ったじゃんー」

「扱いひどっ!」






ほら、楽しそう。

それに前なら佐江ちゃんより私との方が色々話していたのに、同じ舞台をやってるからか、佐江ちゃんとよく話すようになった。




あれ?これってお気に入りの谷を取られた気分?

きっとそうなんだろうな。

私は年下のメンバーを可愛がりすぎる、ってよく言われるし。








本当は佐江ちゃんと話したい。

色々教えて欲しい事がある。







おかしいな。なんか最近の私はおかしい。






前はひたすら先輩で遠慮してた私は、同じグループになったから関係が徐々に変化した。





宮澤さん、から佐江ちゃんと呼ぶようになった。

敬語だったのが少しずつタメ口が増えた。

ライバル意識が強くなってきたのかな…。自分ではよくわからない。




こうしたい。ああなりたい。

そんな気持ちは先輩と比べても…と思っていた。

だけど先輩である佐江ちゃんと対等な立場でいたい、という気持ちが強いだけなんだろうな。






「やあ、玲奈!久しぶりだねー?元気にしていた?」

『あ、佐江ちゃん…舞台、すごく良かったよー…特にRiverのところで泣いちゃった』

「ああ、そういえば…昔言ってたね?」









覚えててくれたんだ…。今度は嬉しくなる。

ひとしきりその時のことを話していると、ホッとする。








『あのね、佐江ちゃんってハモりがうまいよね?私もうまくなりたいの』

「ああ、佐江もそんなに上手じゃないけど…」








前置きをしながらもコツを教えてくれた。これを頑張らなきゃ…。






「玲奈はいつも頑張ってるね。無理をしすぎたら駄目だぞー?」

『えー…全然頑張りが足りないんだと思う…』







色んな人と話して、舞台が終わったばかりで疲れているだろうに真剣に一人一人と話してくれる。

優しいな。出来そうで出来ない、そんなところを尊敬してる。






「宮澤さーん!こっち来てくださいよ!」

「んあー?かおたんかー?行きたくねー」

「ええっ!本当にひどいんですけど!」






そんな風に笑いながら「じゃあまた後でね」って言って去って行く佐江ちゃんを見つめる。



尊敬されていることに嫉妬してる自分が醜いなって思った。

だけどこれは…佐江ちゃんを独り占めできない嫉妬?

どっちなんだろう?





どちらにしても嫉妬や羨望は醜い感情だよね。




もうひとつ、舞台で演技をすることが出来る佐江ちゃんが羨ましいの。

皆とにこやかに話す佐江ちゃん。その佐江ちゃんをまるで恋する少女のように見つめる女の子達。




そんな彼女たちのように素直に甘えることも出来ない私はどう見えてるのかな。


私は…誰よりも輝いている佐江ちゃんを見ながら、胸の痛みの理由を探るだけ。





この嫉妬は何に向いてるの?







(END)





◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇






WEB拍手文をひっそり更新です(笑)

そして今回の内容が重い…(;´Д`)

これは、まるまるそのままではないですが、最近私が思うことなんです。


何となく、玲奈ちゃんは佐江ちゃんが同じグループになってから、仲良くなっていくにつれてライバル心もあるのかなと。

特に佐江ちゃんは「人たらし」って言われる人ですからね。






でも人の気持ち、ましてや会った事のない人の思いなんてわかりません。

これもまた、私の妄想の一片であり、フィクションだと思って気軽に読んで欲しいです。





キャリアは違うけど年齢も一歳差ですからね。

だけど、一期生は先輩が身近にいない状態でした。

佐江ちゃんがやってきたことで玲奈ちゃんたちにいい刺激を与えているのかもしれないです。

そしてTwitterではさえゆきの絡みが熱くて、玲奈ちゃんは何かクールな投稿しか目に付かなかった気がしたので。

ブログではRiverを見てて色々思い出して泣いた、という話がありました。

ハモりが云々、という内容は玲奈モバメからのお話です。






お読みいただきありがとうございました!







管理人・詠





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