短編集A

□王子様オーバードライブ
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何だか今日はクラクラする。




「みやざーさん?どないしたん?具合悪そうやな…」

『ああ、さや姉…何だか体が痛くて、頭が重いんだよね…』

「それは熱の出始めやない?」

『そうかー…ううー、なんか涙が出そう…』

「ちょ、大丈夫なん?…わっ、これ完全に熱やん!」






佐江の額に手をあてたさや姉が驚いて叫ぶ。

ああ、お願い、頭が痛いから大声はやめて…。




でも…




「えっ?み、みやざーさん…?」

『ごめん…手が冷たくて気持ちがいい…もうちょっと…』

「ま、まあ…ええけどな?…どう?」

『すっごく気持ちが…いででででで!!!』

「浮気者はっけーん」






やっぱり…このタイミングで来れるのは1人しかいない。






「…あのなあ、小嶋さん?もうちょっとまともな登場出来ひんのかい!」

「お友達の山本さん?佐江に手を握られて赤くなってる人に言われたくありませーん」

「な!なっとらんわ!そうや、うちらは親友やからな?そんなんなるわけないやろ…」

「語尾が寂しそうー」

「…あんたかて、ほんまは“えーん。浮気しちゃやだー”って縋りたいんちゃうん?」

「ちょ、ちょっとー!陽菜、そんなこと言わないもん!」

「はっ、どうやろな?ほんまは言いたいの我慢しとるやろ?」

「ていうかー!先輩に対してその口の利き方は許しませーん!」

『あの…ごめん、2人とも…少し静かに…』







2人とも…この前の一件以来仲良しだね…。

佐江、何だか嬉しくて涙が…。







『ううう…』

「わっ。みやざーさん?大丈夫か?!」

「山本さーん!陽菜の佐江を泣かせないでくれるー?」

「何が、陽菜の、や!あんたのやないやろ!それにあんたがつねるから泣いたんや!」

「陽菜のせいって言うのー?山本さんの顎が尖って怖いからでしょー!」







あああ…仲良しなのかな…?



何だかどうでもいいくらいに頭が痛いし、この涙はしんどいときに自然に流れる涙だな…。






『あ、なんかヤバイ』





そのまま意識をなくしてしまった。
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