明けない夜が明ける頃

□旅先エンカウント
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佐江 Side




時はもうすぐ夏休みという時期。

佐江のやることは学校に出向いて補習や、部活の顧問の仕事をやりつつ基本的には割りと自由。


「私のバイトももうすぐお休みだし、どこか行けるかなあ…」
『玲奈の行きたい場所とか時期は合わせるよ』
「でも佐江ちゃんの方が忙しいし…でも今年はどこか行きたいね?」


玲奈は隣でニコニコ。

うん、可愛い。
出会った頃から変わらないよな。

年齢の事を言うと冗談でもムキになるから黙ってるけど、佐江よりも5つ年上とは思えないよ。


それは脱がしても全然変わらないし…むふ。



「佐江ちゃん?」
『はっ!?な、何も考えてないよ!?』
「ううん、ほら、あれ。さっきもらった券が使えるんじゃない?」
『へ?…くじ引きか』
「そうそう、夏休み福引大会って書いてあったよね?」
『ほーっ…』



ごそごそとバッグに突っ込んだ券を探す。



「あっ、私が持ってるから…」
『うん、ごめん』


佐江はマイホームパパのように買い物した袋を両手に提げている。
これは別に決めた訳じゃないんだけど細腕の玲奈が持っていると可哀想に見えるから。
もちろん玲奈はすごく申し訳なさそうなんだけどね。


玲奈に手荷物を渡して探すと出てきた。



『えーっと5枚…一回分だね』
「ね、ねっ。引きに行こうよっ」
『そうだなあ、ポケットティッシュもちょうど終わりそうだし』
「もうっ、なんで最初から残念賞もらうつもりなの?」



玲奈は笑いながら福引の列に並ぶ。



「何が当たるかな〜♪」
『ティッシュ』
「だからもうー!」



あははと笑いながら福引会場に貼ってあるポスターを見る。

へーっ、色々あるなあ。
まあ、特賞なんてまず当たらないから…。



『佐江はC賞のペットボトルのドリンク1年分がいい』
「お水?そうだよね、今は震災とかもあるから備蓄出来るものっていいかも」
『そうそう、備蓄ね、備蓄』



佐江は先生になったので昔よりは頭が良くなったはず。
色々難しい言葉を言われても分かるからね。えへん!



「何を鼻高々してるの?…あ、もうすぐだねっ」


誰かがまわすたびにカランカランと鳴る鐘の音。

玲奈はすごく楽しそうにそれを見てる。
こういうところって年上ぽくなくて本当に可愛い。


「ああっ、良かった、まだ特賞出てないよっ」




いよいよ、佐江たちの番になる。
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