明けない夜が明ける頃

□暁月(ぎょうげつ)
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珠理奈Side




さて困った。

不機嫌な女の子のご機嫌をとるのは慣れてるはずだったのに。



「ゆりあ?」

「…」



本当に困った。

さっきから宥めたりすかしたり。

だけど一筋縄じゃ行かない子なんだよ、この子は。




「どうしたら機嫌を直してくれるの?」

「別に不機嫌じゃないし」




いや、不機嫌ですよね?

まん丸い目はギロッと睨んでるし、ぷっくりした唇は尖ってる。

まあ、そんなところも可愛いか。




「何ニヤニヤしてるの?」

「え?してないけど」

「…ふーんだ」




ざっざっと早歩きしているゆりあの横を並んで歩く。

どうやらすぐには許してくれないらしい。




「あのさ、ゆりあ」

「何?」

「本当に黙っててごめんね?」




ぴたっと足が止まった。

こちらを見る。

数々の修羅場を経験した私もちょっと緊張する。




「…色々とあるじゃん」

「え?」

「心の準備とか…さ」

「…うん」

「私だってまだ珠理奈と一緒に住むことは話せてないんだから…お母さんとかに」

「そうだよね」

「なのに、なんだかずるい」




頭を思わずかいてしまう。




「勝手に決めたこと、ごめん」

「…別にそれは嬉しいんだよ?」




ゆりあは漸く笑顔を見せてくれる。



「だけどね…珠理奈の家のことも聞いてなかったし、色々なこと…」




じっと見つめられた。




「話して欲しかったよ?」

「ああ、うん…ごめん、もう、なんて言うか…自分で考える癖がついちゃって」

「悪い癖」




そう言うとゆりあはポカッと叩いてくる。




「痛い」

「嘘」

「うん」



そっとその手を握る。
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