明けない夜が明ける頃

□最終話
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「やっぱりここはいいところだよねー!」







そう言って背伸びする佐江ちゃん。






そしてこちらを振り返りながら、







「ね?…って、いきなり写真撮るなよぉー!」

『ふふっ、だって、すっごいいい笑顔だよ?ほら』






そう言って携帯を見せると「そうかなー」って言いながらも







「でも…玲奈が喜んでくれるなら、まあいっか!」





そう言って笑ってくれる佐江ちゃん。












デートの約束をして1週間後。

私達はR海岸へと出かけた。

そして、今回も泊まりで。





多分…佐江ちゃんはこの前と全く同じにしたいと思っているんだろうな。

同じ電車に乗って、同じお店に寄って、同じ場所ではしゃいで。



だから私も同じことをすることにした。



佐江ちゃんもきっと、私の気持ちは分かってくれている。








だけど違う事は…










「玲奈」

『…うん』








佐江ちゃんは自然に手を繋いでくれる。

それはここだけではなくて、駅までの道のりも、電車の中でもずっと。

もう私は先生じゃないから。





そして、佐江ちゃんも留学の手続きが済んで、後は旅立ちの支度をするだけ。







佐江ちゃんが言うには、






「元々そんなに荷物はないから着替えくらいなんだ…あまり物がないでしょ?」






確かに佐江ちゃんの部屋には家具以外には殆どない。

それが出発の準備をするに従って更に減って行った。







段々とその様子を見ていると、私との思い出が減っていく気がして寂しさは増していく。

だけど、もう泣き言は言わない事にしたの。

そして佐江ちゃんはその言葉に続けて言う。









「服以外には、玲奈の写真が欲しいな」

『え?写真?いっぱい撮ってるでしょ?』

「もっと欲しい。佐江は物欲はあまりないけど、玲奈に関してだけはたくさん欲しいんだ」









欲しい、って言葉に敏感に反応して赤くなってしまう。

佐江ちゃんはそれを見逃さずにニヤリとして「何を想像したのー?」って突っ込んでくるのはお約束。






でも私が『佐江ちゃんの欲しいものは全部あげる』って言ったら照れるの知っているんだからね?
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