明けない夜が明ける頃

□第9話
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あれから暫くして、中西先生が校長先生を伴ってやってきた。

学校の惨状はすぐに分かったらしいけど、あの体育教師の姿はもうなかったらしい。

そこで中西先生が私の話を伝えてくれて…後日、会議が開かれる事になった。









私は数日を残して自宅謹慎。



だけど中西先生が言うには、








「学校は色々と隠蔽したい事もあるみたいで…大学にはこのことは知らされないかもしれない」






ということだった。



正直、それはどちらでも良かった。


私のせいで大怪我をさせてしまった佐江ちゃんの事だけを考えていたから…。

佐江ちゃんも怪我自体は重症じゃないけど、たくさん殴られたので腫れがひかないために休ませられている。

私自身は見える怪我がひどいわけではなかった。






なので、単に自宅謹慎という状態だけだけど…




佐江ちゃんはどうしているんだろう…。




本当はすごく気になってるし、会いたいと思っている。






電話をかけたけど出なかったし、かけ直しもなかった。

メールや色んなメッセージを使ってみたけど返事はない。









『佐江ちゃん…どうしてるんだろう』









本当は部屋にも行きたいけど、もしも私が行く事で何か支障があれば…

そう思うと行く事も出来なかった。




自分の部屋で膝を抱えて閉じこもっている。






突然のことに両親は心配していたけど、まだどうなるのかも分からない。


誤魔化しきれているかは分からないけど、暫く研修をお休みになったということだけ告げた。

何か言っているけど…今の私の頭の中には佐江ちゃんの事しかなくって。





携帯が鳴る。

中西先生か…それとも学校からのお知らせなのか…。





気が乗らずに画面を見る。








『…あっ!!』








慌ててしまって取り落としそうになるのを受け止めて通話ボタンを押す。











『も、もしもし!』

“玲奈?…ごめんね。連絡できなくて…ちょっと色々とあったんだ…”

『ううん!私は大丈夫!…佐江ちゃんは…?』

“うん…怪我は大した事ないし、左手以外はどうにか。だけど退院してから親が来て色々とうるさかったんだ”










親…お父さんだけなら父親、というだろう。

ということは…麻里子さんも?












『内容って聞いてもいいこと…?』

“うん…まあ、こういうことがあったから体育教師の野郎を訴えるとか、後は…”

『…後は?』

“それは、うん、あの、近い内に話したい。電話じゃちょっとね?”

『ねえ、佐江ちゃん…今日、行っちゃ駄目?』

“玲奈…”

『あのね…佐江ちゃんにほんのちょっとだけ、ちょっとだけ会いたいの…』









涙声になる。


泣いたら迷惑かけちゃうのに。
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