明けない夜が明ける頃

□第8話
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週末が明けてもうすぐ研修の終了が近づいてくる。


あっという間で、だけど色々あったなあ。



…それはやっぱり佐江ちゃんとの出会いも大きい。



教職に関してはどうすればいいかはまだ答えが出ないけど、それでも助けになったのは佐江ちゃんの存在。

だけど、佐江ちゃんの将来の目標だけじゃないよ。




私こそ、どうするか決めかねている。





『全然偉そうに生徒に言える立場じゃないな』





そう思いながらもたまに将来の事を雑談混じりに問いかけてくる生徒達に応えている。



今日の授業は終わり。



そして…生徒の皆に挨拶をして離れようとすると、佐江ちゃんが現われた。

他の女の子たちに話しかけられてニコニコ対応している佐江ちゃん…。







分かってますよ?ええ、分かってます。

だけど、やっぱり私の恋人をときめく眼差しで見つめてくる女の子達の姿がまぶし過ぎて…。








『ちゅーん…』

「あ、松井先生…ごめんね、また後でね?」








佐江ちゃんが私の姿を見つけると他の子達に謝って、私の方へと近づいてくる。







「松井先生?」

『さ…宮澤さん…』

「元気がないですね?…佐江が他の子達と話してたから?」








後半は囁くような小声で私の耳元へ。


動揺した様子が見えたのか、








「…動揺しすぎだよ?見る人が見たら疑っちゃうかも」

『あ…ううー…えっと、その…』

「それじゃ松井先生。…また明日ね?」







もう一度佐江ちゃんが耳元で、








「あとで迎えに来るから。また連絡してね?いつもの所で待ってるから」








そう言うとにっこり微笑んで素早くウィンクをして去って行った。





かっ、かっこいいよぉ…。










「佐江ちゃんと相変わらず仲良しですね?」

『…えっ!?あ…』










松井さんだった。

面白くなさそうな顔で離れた場所に立っている。

思わずまわりをきょろきょろ見回すと苦笑いしている。








「大丈夫ですよ?誰もいないのを確認してからじゃないと言いませんし…」







こちらをちらっと見て続ける。







「佐江ちゃんと違って学校で不用意な言動もしないです」


『…ま、松井さん…』
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