明けない夜が明ける頃

□第7話
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2人で出かけた旅行は本当に思い出に残る夜だった。

あれからも殆ど眠らずに何度も何度も…。





佐江ちゃんは申し訳なさそうな顔をしていた。








「玲奈?その…ごめんね?何度も…」

『う、ううん…!私もついつい求めすぎちゃって…』

「ああああ…玲奈が可愛すぎるのと、佐江の性欲が底無しなのがいけないんだぁあ…」

『い、いや、佐江ちゃんの性欲は知らないけど…私は可愛くないよ?』








裸で抱き合っていると、何となくふざけてじゃれあっていてもそんな気持ちになるみたいで…。







「あのさ…一応気を使って、指だけじゃなくて舌も使ったけど…」

『あ、改めてそういうこと言わないの!』









確かにちょっと…しみるかもしれないけど…大丈夫…多分!

チェックアウトの前に佐江ちゃんが「ね!一緒にシャワー浴びよう!」って強引に一緒に連れて行かれて…










『もー!佐江ちゃんは本当にー…シャワーの意味がなくなるでしょ?』

「ご、ごめん…明るい場所で見る玲奈の裸も綺麗過ぎてつい…」









…確かに底無し過ぎるかもしれません。



早めにチェックアウトをしようと佐江ちゃんが言ったのは他の人に見られないように。

結構ギリギリまで残るカップルがいるから、早いほうがいいって。

始発まで海で過ごして、週末だけど通勤や通学する人がいる時間帯をやり過ごす。





帰りの電車は一緒に乗って隣同士で揺られる。


そっと手を繋いでくれる佐江ちゃんが「大丈夫だよ」って言ってくれている気がして、すごく安心出来る空間。




流れていく海や山の風景を眺める。

見ていると涙が流れてきた。








「玲奈…?どうしたの?」

『あ…ごめん…何だろうね?景色が綺麗だなって思って…』








そして佐江ちゃんと一緒にその綺麗な景色を見れたのが幸せって感じたの。



そう言うと佐江ちゃんはにっこり笑って、素早く耳にキスをくれた。








『さ、佐江ちゃんっ…』

「大丈夫。見られてないよ…ちょうど死角だったからね」

『うん…』

「今だけの幸せじゃないから。ずっと続くよって言いたかったんだ…でも言葉だけじゃ嫌だなって」

『…佐江ちゃん、大好きだよ?』

「…へへっ…佐江も…」







じっと見つめられるとキスしたくなっちゃう。


お互いにすごく強い感情を持って向き合っているのが分かる。







辛い事だけじゃないんだ。

幸せなことでも我慢が必要なことってあるんだね。
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