明けない夜が明ける頃

□第6話
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色々なことがあったけど…待望の日を迎えた。

佐江ちゃんはいつも通りだった。




松井さんはあの後も普通に「どこか行きませんか?」って話しかけてくるけど、あの時のような危なさは感じなかった。

もしかしたらあれは演技だったんじゃ…と思う部分もあるけど、佐江ちゃんの言う事が正解なら…あれが本来の姿なのかな。






「楽しみだなあ〜。少し離れているから…何も遠慮することないね!」

『佐江ちゃん?遠慮がないって言っても限度があるからね?』

「大丈夫!…夜中の海岸でエッチなこととかしないから!」

『ちょ!そ、そういうことを外で言っちゃ駄目でしょ…!』







相変わらずと言うか、いつも以上と言うか…

佐江ちゃんのテンションが高すぎる!




でも…そんな佐江ちゃんをみているとすごく嬉しくなるし、どうしても顔が綻ぶ。

目的地までの電車に乗る時はわざと別々に。

そして、目立たないように端っこへと二人で移動する。








「玲奈?ほら、お弁当!買ってきたよ…これで良かったの?」

『あー!ありがとう〜!ふふふー、このお弁当ね…ほら!この列車の形をしているの!可愛いでしょー!?』








そう!私は乗りものが大好き!

そして特に電車や新幹線などなど。





このお弁当は普通は子供向けみたいなんだけどね?


それにそれに!

おまけについているこの列車のおもちゃが…!







『…佐江ちゃん?もしかして…呆れてる?』

「えっ!?い、いや?玲奈が喜んでいて、すごく嬉しいなーってね?あはは、あはは…」

『すっごい乾いた笑いー…』

「い、いやいや!本当に!…だって、最近玲奈は少し考え事しているのかなって思っててさ」

『あ…ううん。やっぱり仕事を始めると大学と違うから色々ね?』









思わず誤魔化してしまった。

そして私が悩んでいるのに気付いている佐江ちゃんは、おかしいと思いながら深く追及はしてこない。






佐江ちゃんはお弁当と一緒に買ってきたお茶のキャップを開けてくれた。

そして座席の前についているテーブルを倒して、そこに置いてくれて…








『佐江ちゃんって…本当に優しいね』

「…え?いつも玲奈はそう言ってくれて嬉しいけど…佐江は一体何を言われてるのか分からないんだ」








そういう自然に出来る優しさは佐江ちゃんの宝物だと思う。



色々と複雑な家庭環境があるのは少しだけ聞いた。

だけど、そんな風に人のためにと考えられる佐江ちゃんの本質は…捨てられた、って思っているお母さん?

それとも、再婚したと言うお父さん?






そんなことを考えていると、何度も思い出すのはあの日の佐江ちゃんと木崎さんの会話。








「玲奈?…どうした?お弁当食べる手が止まってるよ?」

『え?あっ、その…ちょっとぼーっとしてて…』

「そうなの?…ほら、いいから食べて食べて!」







佐江ちゃんの笑顔を見ていると胸にぐっと来ちゃうから、私は誤魔化す為にお箸を動かしていた。
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