明けない夜が明ける頃
□第1話
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『えー!?何それ…そんな危ないことしたくないよー!他を当たってよー』
“お願い!玲奈しか頼めないのっ!危なそうなら帰っていいから!ね?”
『いや、おかしいでしょ!それって最初から危ないじゃん!それに私、もうすぐ…』
“直前で用事が出来たから代わりに来たって言えばいいから!じゃあ詳しいことはメールするね!恩に着るから!”
『恩に着てもらわなくても…!』
“ガチャッ”
『ええええっ!信じられない…!』
途方に暮れて何度もかけ直すけど出てくれない。
無視をすればいいんだけど…
『はあ…色々お世話になってるから仕方ないか…』
一度でもお世話になったら恩義を忘れてはいけないと教育してくれた親を恨みつつ準備をする。
友人から「今日会う約束をしている人がいるけど急用が出来たから代わりに行って!」と言われた。
連絡をすればいいのに、というとその人に連絡をしたら
「じゃあ他の友達に会わせて」
と言われたとか。
一体何の約束かと思えば…出会い系だった。
しかも!男の人かと思えば、女性だという。
メールには、その人の情報が色々と書いてあった。
それによると、見た目は結構かっこよくてやり取りした感じだと優しそうだったとか。
『…そんなの会うまでは誰だって優しくするよ』
自慢じゃないけど私は今まで恋人がいたことがない。
というよりも、恋愛したことがない。
まさか友人が女性を好きだなんて思いもしなかったけど…それで別に見る目が変わるわけでもない。
“玲奈がそういう人だと思ったから頼めるんだよ。やっぱり親友だね!”
…そう言われてしまったらなにも言えない…。
だけどその人だってすごく変な人。
友人を気に入ったから会うんじゃないの?なのにその人に他の子を紹介してだとか…。
それを言うと、友人はすごくフォローしていた。
なんで?そういうことをしたくなるくらいに魅力的な人なのかな…。
もうすぐ会う予定の時間。
とりあえず、指定された場所へ行く事にした。
その人の連絡先も許可をもらって預かっている。
もちろん向こうにももう渡してあるらしい。
行かないことには、その人からも連絡があるんだろうなあ…。
少し重い気持ちになりながら家を出た。