電照菊

□大学生時代@
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島を離れて都会の大学へ進んでから1ヶ月が過ぎた。


世間では五月病というらしいけど、私は毎日色んな研究やリポートなどに追われて忙しくて…。

全く余計なことを考えないくらいです。




ぽっくんとはほぼ毎日電話、メール、スカイプをやったり。

生身で触れ合えないのは残念だったけど、顔を見れるし声も聞けるのだけが救いだった。






“明日香、ちょっと痩せたよね?”

『そうかなあ…?うーん、でも最近忙しくてあまり寝てなかったから…』

“かなり心配だよ…大丈夫?”

『まあ、ほら、ダイエットと思えば、ね?』

“えー…女性ってほら胸から痩せるって言うしなあ…”

『…この巨乳好き』

“え!い、いや、違うよ!?佐江は明日香の胸が好きなんだ!”

『だ、だから家族の人が聞いてたらどうするの!そういうこと言っちゃ駄目!』

“大丈夫だよ、だってインカムしてるからさ!”





…あのね、ぽっくん…。

私の声はまわりに聞こえないだろうけど、あなたの声は丸聞こえなのよ?

でもそんなおバカな感じも私の癒しになる。





毎日勉強で忙しいけど、励ましあう友達も出来たし、都会は楽しみがたくさんある。

それでもやっぱり何もない島で、あの田舎町でぽっくんと手を繋いで帰ったり、陽菜ちゃんたちと喋ったり。

多分都会の人たちからするとつまらないことが幸せだったなって思う。





それに…こちらは遠くから来る人もいるけど都会育ちの人も多くて。

特にサークル活動とかでたくさん勧誘されたから、断るのが申し訳なくて飲み会に参加はしたけど…

明らかにナンパ目的な軽薄な人が多くてそれにも疲れてる。





“明日香?大丈夫?また今度話そうか?”

『あ、ううん、ごめんね?ちょっと嫌なこと思い出しちゃって…』

“…例のナンパ?佐江が近くにいたら絶対に近寄らせないのに…”

『ぽっくんの私包囲網も通用しないしね』

“はっ!な、何故それを?!”

『皆から聞いてたし、ぽっくんも教えてくれたじゃんー』

“そうだったっけ?あはは…本当に近くにいたら絶対に誰にも手を出させないのに…”

『いえ、出されてませんし、出させません!』






ちゃんと口説かれたらきっぱりと言うことにしてるからね!

でも『地元に彼氏がいるんで』って言うと殆どが「大丈夫だよー、遠距離だから気付かれないって!」って。






『一体何が大丈夫なんだか!』

“あ、明日香?”

『ああ、うん、ごめん…でも正直こっちでは友達と息抜きするくらいで勉強ばかりなの』

“そうだよな…明日香が忙しい時は今日は電話は無理って言ってくれていいからね?”

『ううん、だってぽっくんと話すのが楽しみなんだもん。それがなければ無理だよー…』

“ありがとう…佐江もだよ?”





春から私たちの生活はかなり変わってしまった。


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