電照菊
□高校生時代C
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残りの夏休みで私とぽっくんはたくさんデートして、大島くんと陽菜ちゃんカップルとWデートして。
そして毎年恒例行事で宿題を殆どほったらかしているぽっくんと陽菜ちゃんのために勉強会。
こうして考えてみると…カップルってよく出来てるなあ…。
夏休みも終わりに近づいて、卒業にはまだ余裕がある学年だけど将来の話もたまに出る。
大島くんの家はお寿司屋さんで、修行に出るのか聞いたら家の仕事を手伝いたいんだけど…って珍しく言葉に詰まっていた。
陽菜ちゃんはぷっと唇を尖らしている。
ぽっくんを見るとちょっと微妙な顔をして苦笑い。
大島くんの家で勉強会を開いての帰り道。
いつものように私の荷物を持ってくれて手を繋いでくれている。
ちょっと言いづらそうに口を開いたぽっくん。
「優子さ、頭いいじゃん?親父さんたちは家を継ぐより、大学行っていい会社に行って欲しいって言ってるんだって」
『そうだったの?てっきりお寿司屋さんになるんだと思ってたー…』
「本人はそうみたいなんだけどね…そうすると遠くの大学ならにゃんにゃんとは離れるでしょ?」
『あ…それであの顔』
陽菜ちゃんはクールに見えて大島くんの事が大好きだからね…。
そしてそれが分かっているから、大島くんも決めかねている部分があるんだと思う。
「でもね、佐江は思うけど、優子が遠くへ行くならにゃんにゃんはついていくんじゃないかな?」
『え!か、駆け落ち!?』
「いや、別に反対はされてないからそれは違うかもだけど…多分にゃんにゃんはそうしそうじゃない?」
『確かに…でも、そうなったら寂しくなっちゃうね』
「うん…でもまだどうなるか分からないよ。きっとまだ考えているんだと思う」
ぽっくんはどうするんだろう…って昔悩んだ事を思い出した。
運動神経がすごくいいから色々とスポーツの強豪校からの話もあったのは聞いている。
そっちに進んでもいい、っていうご両親の言葉を聞いても尚「家の仕事を継ぐから」って言い切ったぽっくん。
本当にかっこいんだよね。そういう所。
「ねえ、明日香は?」
『私?何が?』
「進路のこと。明日香も頭いいじゃん?だから…進学とか考えてるのかなって」
『う…ん…何も考えていなかったな…』
子供の頃からぽっくんのお嫁さんになる事だけ考えていた。
それは漠然としたものだったけど、あのお祭りの夜に結ばれてからそれは更に強くなった。
『でも…ぽっくんと離れることなんて一番考えられないよ…』
「…明日香」
繋ぐ手に力が入る。
昔からそうだった。
私は、この力強い手についていけば大丈夫。
何だって怖くない。
そう、思っていた。