*夢譚*

□CAT'S EYE*5
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*恋しくて




カタカタカタカタカタカタカタカタ





小笠原さんがパソコンを打ちこむ音が、静かな捜査室に響く。





ワタシは室長のデスクで香箱を作り、その音に耳を傾けている。





壁のボードを見上げれば、室長の名前の横に『出張』の文字。





いつものように「また明日な」って帰ったのに、突然の出張。もう数日が経った。





やっぱり室長が居ないとつまらない。





いつ帰ってくるのかなぁ……。





カタカタカタカタカタカタカタカタ



コツ、コツ、



カタカタカタカタ



コツ、




……!





小笠原さんから聞こえてくる音に混じって、聞き覚えのある足音が微かに耳に届いた。





ワタシは弾かれたように扉へ向かう。





派手な音を立てて扉が勢いよく開き、会いたくて堪らなかった室長が帰ってきた。





少し驚いたようにワタシを見て、口端をふっと吊り上げる。





「お出迎えなんて珍しいな。寂しかったのか?」





室長に会えなかった寂しさも、会いたい一心で扉の前まで走ってしまったことまでも見抜かれたような気がして、恨めしげに室長を見る。





ニヤニヤと意地悪な顔の室長に、むくれて目線を逸らすと、ワタシの頬に大きな手が触れた。





「なんだ、ご機嫌ナナメか?」





ワタシを見る瞳はいつも優しいから、少しくらいの意地悪なんてすぐに許してしまうけど、でも、ちょっとだけ悔しいから、口元をくすぐる室長の指を、チロッと舐めた。





「…!」





指先が跳ねて、少し困ったような表情に変わった室長が、なんだか可愛くてキュンと胸が締めつけられる。





ね、今日はいっぱい甘えてもいい?





大きくて温かい手に頬をすり寄せるワタシを抱き上げて、室長はワタシのおでこに、チュッとキスをする。





「ただいま」





耳元で甘く囁いて、とびきり優しい笑顔をくれた。






―CAT'S EYE*5・終―




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