ゴーストハント

□声が聞きたい
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声が聞きたい




ナルが双子の兄の亡骸を見つけ出し、イギリスへと帰っていった。
オフィスは残ったが、ナルが日本に戻ってくるのは何時になるかはわからず、その間はナルの師匠でもある、まどかさんが渋谷のオフィスを預かるかたちとなった。
だから、麻衣は学校が終わると、いつもオフィスに来ている。
まぁ、来ているからと言ってお客さんが毎日来るとは限らないのだけど。

「麻衣ちゃん、やっぱりナルが良かったかしら」

麻衣は知らず知らずまどかの前で盛大なため息を連発していたらしい。

「えっ!?そんな事ないですよ」

私は慌てて否定する。
そんな事はない。そんな……
ジーンを喪って気落ちしている事も考えてナルはイギリスに帰り、両親が落ち着くまで側にいると決めたにはナルだ。
自分の私情で帰ってきてオフィスにいて欲しいなんて言えるわけがない。

「まどかさんはナルと違って何でも話しやすいし、でも、何ヶ月か一緒に心霊調査をしてみて、いっぱいバカって言われながらも一緒にいたら、やっぱり少し寂しいなぁって思ちゃって」

そう話してるうちに胸の奥が熱くなり、込み上げてくるものがあった。

目頭が熱くなる。

「会いたい?ナルに?」

そう聞かれて麻衣は否定の言葉を口にしようとするが、心がそれを許さなかった。

「はい。でも、今は悲しみに暮れているお母さんについてあげて欲しいとも思っています」

まどかは我が子を見つめるような慈しみの目で麻衣を見た

「そう…」

「はい」

そう言って麻衣は涙がこぼれないように瞬きをして、まどかに笑いかけた。



それから数日後

オフィスに電話がかかってきた。

ナンバーディスプレイには国際電話と表示されている。麻衣はまどか宛の電話と判断し、まどかに声をかけた。

でも、まどかは電話に出るわけでもなく、麻衣に言った。

「それは、麻衣ちゃん宛の電話だと思うから」

だから出てと言外に告げていた。
麻衣には海外から電話をもらうような相手に心当たりは見つからない。首を傾げながらも電話を取った。

「はい。渋谷サイキックリサーチです」

そう言うと、

「麻衣か」

長らく聞いてない良く知った声音が受話器の向こうから聞こえてくる。
麻衣は一瞬絶句した。なんて声をかければいいのかわからなかった。

「麻衣?」

そう不審げなナルに対して麻衣は言う

「本物?本当にナル?」

相変わらずの呆れたような声が返ってくる。

「お前は寝ぼけているのか?それとも本当に寝ているのかどっちだ?」

そのバカにした物言いに心当たりがある。
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