残された時間

□ありがとう
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静かで緊張感のある空気が広がっている






全員が重い表情をしている




バタっ




手術中と書かれた赤いランプが消えた






今まで、静かだったのが少しざわめいた






ガラガラ





そして、重い表情をした先生が出てきた






先生に、優君は急いで駆け寄り





ゆ「先生、南は?南は?」






優君は今まで見たことのないような真剣な表情をしていた






すると、先生は冷静な声で




『全力は尽くしましたが、もって後1時間というところです。




その1時間に、意識が戻るかどうかもわかりません』




その先生の言葉は、私たちの心にものすごくのしかかった





そして、その言葉を聞いた優君は





ゆ「何でだよ!あんた医者だろ!



なのに、何で、何で南を助けれねんだよ!!」




とても怒り狂った表情で、先生の襟をつかんだ





先生は、何も言えずにいた





優君は、襟を掴んだまま先生に迫りよった





ま「やめなさい!優!」




麻里子先生が、注意するものの優君はとめなかった






ゆ「何でだよ!なんでなんだよ!!」




優君は、泣きながら先生に迫っていた




私はそんな優君の姿を見ることしかできなかった





でも、そんな姿を見た陽菜は泣きながら優君も抱きしめて




は「もうやめてよ!優…………




先生にあったって、結果は変わらないんだよ………」





ゆ「でも……でも………………」




そう言って、優君は先生の襟から手を離した





そして、優君は抑えられない気持ちをイスに向けた






気づかないうちに、私の頬からもポタポタと涙が流れていた






私のせいで………みなみが…………






私があの時に、ちゃんと周りさえ見ていれば………






南は、あんなことにならなくてよかったのに…………






そしたら、皆悲しまなかったのに……………






そう考えるだけでまた、大量の涙があふれでた





南じゃなくて、私が死ねばよかったのに…………






今から、私が死ねば南は助かるかな……………






どっちにしろ、南がいない世界になんて興味がない






そう思うと、身体が勝手に動いていた





そして、私は席をたち、屋上に向かおうとした





すると、いきなり席をたった私を見て、





ま「どこに行くの?敦子」





と真剣な表情で私の目を見て言った





「少し風にあたってきます」





そう言って、私はこの場を去った





階段を1段1段登る度に、南との思い出が溢れてきた






今から、死に行くというのに全くの恐怖さえなかった





そして、屋上についた





屋上からは、ビルなどの光で光ったとても綺麗な景色だった






でも、今の私には全く響かなかった





そして、私は靴を脱ごうとしていると、






い「ちょっと待った!」




そう言って、誰かが近寄ってきた





私は、素早く飛び降りようとすると、




その人はわたしの身体を押さえ込んだ





私は必死で抵抗したが





その人の力には及ばなかった






そして、私がおとなしく抵抗をやめると






その人も私を離してくれた






そして、その人は私の顔を見て




い「あなた、敦子ちゃんでしょ?」





「はい、そうですけど………」




私は返事はしたものの、何でこの人が私の名前を知っているかわからなかった





い「南から、あなたの写真は見せてもらったわ



いつも南はあなたの写真持っていたから」





私は、この人がなぜそんなことを知っているのかわからなかった





そして、その人は、また私に質問してきた





い「あなた、今死のうと思ったでしょ?」






「はい………」






い「多分、あなたは自分が死んだらよかったのにとか思ってるんでしょ」




私は、大きな声で自分の気持ちを言った


「そうですよ!私が死ねば良かったのに!!」





バチッ






い「バカ言ってんじゃないよ!



あなたが、今死ぬってことは




南の命が無駄ってことになるんだからね!




それに、あんた南のこと好きなんでしょ



だったら、最後ぐらい一緒にいてあげなさいよ!!」





その言葉を聞いて、私は我に戻った





「私…………………………」






すると、優しくその人は私にそばにより





い「一緒に行こう」




「はい……………」





そして、私は引っ張られ病室に向かった







病室に入ると






そこには、ベッドで寝ている南がいた





さっきとは、違いいつも通りの顔だった





い「麻里子、意識は?」





そう聞くと、麻里子先生は首を横に振った






そして、時間はたち






先生が言ったタイムリミットの10分前になった






そして、私の中の感情が抑えきれなくなった






「南!ねぇ南!!



いつまで寝てるの!




早く目を覚ましてよ!!





一緒にいろんなとこ行こうって言ったじゃん






まだ、いろんなとこに行ってないじゃん




だから、起きてよ!起きて南!!」





そして、私は南を抱きしめた





『敦子…………………』





そこには、とても小さいけれど
はっきりと





南の声が聞こえた





それを聞いた全員がベッドの周りに集まった




そして、南は口を開いた





み「優、今までずっと迷惑かけてごめんな……」





ゆ「何言ってんだよ!




全然迷惑とかかけられてねぇよ



俺の方が全然力になれなかった………」






み「優は、十分俺の力になってくれた




多分、優の支えがなかったら、今ここに俺はいないと思う




本当にありがとう」





ゆ「こっちこそ、南にはずっと頼ってばっかだったな




今の俺がいるのも、南のおかげだ







ありがとう…………………」






み「陽菜…………




夏休みずっと優を占領して悪かったな




2人だけでどこかに行きたかったと思うのに




本当にごめん」





は「いいよぉ そんなことは………」





み「優はさぁ良いやつなんだけど



たまにカッとなったりするから




そういうときは、陽菜が優をとめてくれ



これからも優をよろしく」






は「わかった…………」








み「麻里子先生、先生にも迷惑をかけましたね



わざわざ、僕のところに来たりしてくれてありがとうございました」





ま「何言ってんのぉ



担任として当たり前でしょ」







み「先生、これからも頑張ってください」







み「板野さん、本当にいろいろありがとうございました




僕が楽しく生活できたのは板野さんのおかげです




これからも頑張ってください」





い「うん……………………」







み「そして、敦子…………………」




そう言って、私を見つめる目は、とても優しかった






み「たくさん泣かせたりしてごめんな」






「ううん………………」







み「本当、俺は最低な男だよな




何回も敦子を泣かせ




何回も敦子を傷つけた




本当にごめん……………」






「南は、私の心の支えだった




いつも私に、優しくしてくれる




南は最低な男なんかじゃない………」






み「ふふん




敦子にそんなこと言われて嬉しいよ





そして、敦子の為に残り少ないこの命を使えて本当に良かった




ほとんど心残りもない




まあ、一つ言うなら敦子よ約束を守れなかったことくらいかな





本当に俺は幸せだよ




こんなにたくさんの人に見送られ最後をおくれるなんて





本当にありがとう





そして、敦子





こんな俺について来てくれてありがとう……」






ピーーーーーーーーーーー






病室には、南の命を終わりを知らせる音が響いた





「南、南、もう一回目を覚ましてよ!ねぇ、南」





そんな私を優君は




ゆ「もう行かせてあげよう




南は十分頑張ったよ…………」






南ぃ 南ぃ





「南ぃーーーーーーーーーー」





私のその声は、もう南に届くことはなかった

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