ハロー、ハロー

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「敵船だ〜〜〜〜!!!!!」


見張り番の人の声が船内に響く。

船に乗せてもらってから数週間が過ぎた。数週間の間に2回くらいは敵船に遭っている。

島を離れるとやっぱり船も多くなってくるらしい。

敵船と戦闘になった場合、みんなは私に隠れてろって言うけど結局は戦っている。

戦闘はどちらかというと得意だ。能力もあるし、サラに一番しっかり教わった事だから。

とりあえず敵の人数や位置を把握するため、レーダーを展開する。


「甲板、10人きた。」

「おおさすが能力者・・・。他は?」

「敵の船内に・・・え、たくさん・・・?一つの部屋に集まってる。動き回ってるのが・・・甲板の人をいれて20人。」


何か変なの。というと、部屋から出てきたらしいキャプテンが舌打ちをしながら言った。


「奴隷商船だな。」

「!」


奴隷商船、昔私がいたところ。


「とりあえず攻撃してくるんならやり返すしかねぇな。全員戦闘開始だ。」


キャプテンの言葉にみんなうおおおとか言いながら反撃に入るため甲板へ駆けていった。

こんな広い海で私が乗ってた船に遭う可能性なんてゼロに等しい。

何より私が海に落ちたあの日、あの船が無事だったとは限らないんだから。

だから大丈夫。と考えて、なぜ私がそんなことを思っているのか自分で自分がわからなくなった。




キャプテンは私に嫌なら隠れてろ、と言って甲板へ出て行った。

嫌、なのかな。奴隷商船と聞いてどきっとしたし、ずっと胸のあたりがもやもやしている。

たぶん、奴隷商人が怖いんだ。

10年前の嵐の日に船から落ちて、初めて外の世界を知った。

サラと出会って名前を貰い、いろんなことを教わって、感情を知った。

まだ短いけれど、キャプテンに拾われて海の広さや海賊の自由さ、航海の楽しさを知った。

色んなことを知った今だからこそ、10年前の記憶にある奴隷商人がすごく怖い。

でも、許せない。

同じ目に遭っている人たちを助けてあげたい。




考えるのは苦手だ。難しいことは分からないから。

とりあえず甲板へ行こう。捕まった人たちを助けさせてってキャプテンに言わなきゃ。







甲板に出るとみんな戦っていた。

能力があるからたくさんの人の中からでも難なくキャプテンを探し出すことができる。


「キャプテン。あの、」

「あ!?イルカてめえなんで出てきた!」


怒られた。顔怖いですキャプテン。

でも怯んでる場合じゃないんだ。


「あの!捕まってるひと、たすけて、あげたい、です。・・・ごめんなさい。」

「前にも言ったがな、おれたちは海賊だ。」


やっぱりだめかな。そうだよね、海賊って一応悪い人たちだもんね。

でもキャプテンから発せられた言葉は予想外のものだった。


「てめぇのやりたいようにやればいい。海賊ってのは自由だからな。」

「!!」

「ただし、1人で敵戦に乗り込むのはダメだ。もう少し戦況が落ち着くのを待て、いいな。」

「うん!ありがとうキャプテン!!」


海賊は悪い人たち。

でもやっぱり、この人たちはいい人。
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