Samson girl!
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かっこつけて二匹とも相手にしてやるぜなんて言ったものの、こいつら塔にいる中で一番強そうな奴らじゃね。
いやぁ、困ったなー。でもなーあの二人あんなんだしなぁー。
「お前のせいだ!」
「おれのせいじゃねーよ!!!」
「"碧夜叉"一人を二人で相手するのは嫌じゃのう。」
「どっちがどっちを殺るかだな。おれは"碧夜叉"と戦りてぇ。」
「そんなもんわしだって"碧夜叉"を相手する方がええに決まっとるじゃろ。」
『え、もしかして今おれって人生初のモテ期ってやつ?』
「「それはない。」」
そんな二人同時に否定しなくてもいいじゃねェか。
か弱い乙女の心にグサっと来たんだけど。
「じゃあ先に"碧夜叉"を殺した方が勝ちだ。」
「殺せなかった方はあいつらの相手をする。」
「それでいいな。」
「しょうがないのう。」
『は?ちょっと何勝手に決まってんの!おれの意見はァァァァァァァ!!??』
いやまぁおれが二匹とも相手にしてやんぜって言ったんだけどさ!!
マジで来るとは思わないじゃん!?
『ぎゃーーーーーー!!!!』
狼の方がおれに向かって腕を振り下ろして来たりキリンが面白い顔で鼻を撃ちだして来たりなんつーかもう・・・。
『思ったより戦えねェぇぇぇぇぇ!!!!』
「おいおいおい大丈夫かアイツ!!!」
「知るかよ!!」
おれは今完全に二匹に追いかけられている状態なんだが、いい方法を思いついたところだ。
ていうかおれの遠い記憶が何かを思い出した気がするんだ!!
『ほっ!』
おれはドゴッと思いっきり地面を蹴って後方へ思いっきり跳んだ。
そしておれを追いかけてきていた二匹の後頭部へ回り込むと、まずキリンを蹴り飛ばした。
その次に狼を蹴り飛ばそうとして・・・捕まった。
狼はおれの足を掴んで持ち上げるとこう言った。
「CP9に勝るとも劣らない身体能力には感服するぜ。だがまだ甘いな!」
そういうと狼はおれを投げ飛ばした。
だがおれは空中で体勢を立て直すと壁に両足をつけ、そこからもう一度跳んだ。
そして狼に蹴りかかった。
「"鉄塊"!」
"鉄塊"という名前の通り狼の体は鉄を蹴ったように硬く、あまり効かなかったようだ。
『やっぱさぁ、おれお前らのその技聞いた事あると思うんだよね。』
「ほう・・・。」
「わしもおる事を忘れられては困るのう!"剃"!」
声がしたと思ったらキリンがおれの後ろに回っていた。
それにしてもなんだったかな・・・こいつらの体技。
確かジジイがなんか言ってたんだよな・・・。
「良いかエレナ。我らオルガ族には"天裂拳"と呼ばれる体技がある。」
『天裂拳?』
「そうじゃ。天を裂き地を割る我らの力があってこその体技。最近では一部の者が真似事をしておるらしいが真の"天裂拳"には敵わぬ。
もしもその"天裂拳"の真似事をしている輩と戦う事があればその時は叩きのめせ!!我らの力を見せつけてやるんじゃ!!
若造共が調子にのりおって!!!!わしがあと40年若かったら直々に叩きのめしてやるというのに!!!!!」
『おいジジイ後半私怨じゃねーか。・・・"天裂拳"ってどんな技なんだ?一応聞いといてやるよ。』
「それはじゃな・・・・・」
あぁ、思い出した。
「"鼻銃"!」
「閃光の如き速さで移動する技。」
『"閃"』
「!!!!これは・・・!」
『なんだっけ?お前らの中では"剃"だったか?』
背後に回っていたキリンの攻撃を躱し、おれは二匹から少し離れた場所にいた。
小さい頃話で聞いた"天裂拳"。あの頃は関係ないと思いテキトーに聞き流していたので今の今まで思い出さなかったが今思い出した。
『普通の人間で使える事は褒めてやるよ。でもこれって元々おれらの技なんだわ。』
「なんじゃと・・・?」
『ほら、ぼーっとしてるとおれが勝っちゃうぜ?』
そう言っておれはキリンの背後に回り、殴る構えをとった。
「クッ・・・!"鉄塊"!」
『違う違う。その技は─』
「体を鉄の硬度まで硬め、攻撃する際に打撃の威力を上げる技。」
『─こう使うんだよ!!"硬"!』
ドゴォッと素手で殴ったとは思えない音がし、キリンは部屋の隅までぶっ飛んで行った。
『ほら、次はお前の番だぞ。狼君?』
「成程・・・侮っていた・・・。」