双子の恋人(短編)

□双子の恋人3(社会人)
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再会から2年。


俺たちは、同居している。親と離れ、2人だけで。


あきは、薬科大に進んだ。
別に薬に興味があったわけではないが、時を忘れられる化学が好きだ。

まきは、美容の専門校に通いながらバイトをしている。


どちらもそれなりに忙しくて、ゆっくり2人で過ごせる時間は多くはなかった。


「ねえ、あき」


今日は久しぶりに朝食の時間が一緒だった。


「なに」


あきはパンをかじりながら目線を上げる。


「大学はどう?楽しい?」

「んー、まあそれなりに」

「まきは?」

「楽しいよ。この前新しい髪型に挑戦したんだ〜」


あきと違ってまきには友達も多く、いつも楽しそうだ。
20歳を過ぎ、飲みに行くことも多くなった。


「あきにも今度やってあげる」

「はは、俺はいいよ。髪短くする時はお願いします」

「えー、もったいないな〜絶対似合うのに」


きれいに髪を染め、かっこいいまきにはきっと似合う。
でも、双子といえど地味な自分にはきっと似合わないだろう。


「ごちそうさま」


電車時間が迫っている。
あきは食器をもって席をたった。


「ねえ、あき!」


まきの呼び声にあきは立ち止まった。


「ん?」

「今度バイトの友達、連れてきていい?うちで飲みたいんだ」


あきは笑顔を返した。


「別に構わないよ」

「…ありがと」


そう言ったまきの笑顔には元気がなかった。

きっと、自分も同じだろう。


一緒にいるのに距離があって、2人の関係は今少しぎこちなくなっていた。
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