双子の恋人(短編)

□双子の恋人3(社会人)
2ページ/13ページ



図書館で勉強していたら遅くなった。

あきは真っ直ぐ家に帰った。


しかし。


アパートの玄関の前に立ったあきは後悔していた。


中から聞こえてくる笑い声。

そういえばまきがいつだか友達を連れてくると言っていた。

それがまさか今日だとは。


なんとなく気まずい。
こんなことならどこかのネットカフェにでも泊まってくればよかった。


「はあ……」


今さらどこかに行くのも気が引けて、あきは仕方なく鍵を回した。

ドアを開けるとバタバタとまきが走ってきた。


「あき、おかえり!」


満面の笑み。
酔っているようだ。


「ただいま」


あきが靴を脱いでいるとまきの後ろからひょっこり誰かが顔を出した。


「あ、コイツね、バイトの同僚」


まきが紹介する。


そのバイトの同僚はにっかりと笑った。


「うーす。宮城 健太です、お邪魔してます」


長身のその男にあきも笑顔を返した。


「どうも」


あきはまきに視線を戻す。


「まき、俺風呂入って先に寝るね」

「えー、あきは飲まないの?」

「俺はいいよ、友達とゆっくり飲みな」


口を尖らせるまきと健太の脇を通り過ぎた。

ふわりと香水の香りが鼻についた。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ