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朝からひなちゃんの様子がおかしかった


校門でハルちゃんとひなちゃんに会って

「あれ?珍しい マコちゃんは?」

って聞いたら

「何か、先に行っちゃったみたいで」

とひなちゃんが寂しそうに笑って言うから
その時はそれ以上触れられなかった





僕はひなちゃんの泳ぎも大好きで
人魚みたいだといつも思ってたし
性格も喜怒哀楽がはっきりしていて
裏表のない彼女と一緒にいるのが凄く楽しかった


ハルちゃんとマコちゃんがひなちゃんの事をお姫様みたいに大事にしているから
ひそかに彼女を人魚姫、と呼んでいた



スイミングクラブに慣れるまでは
相変わらず泣き虫だった僕だけど
彼女はとても優かった

暫くしてからはハルちゃんへの憧れもあって
僕なりにひなちゃんを守れる男になるんだと
意気込んでいた時期もあったり




2人がいない所で泣きそうになっているひなちゃんを励ましたりした事もあった






だからかな…
元気のないひなちゃんを放っておけなくて教室で何があったか聞いてみた


ひなちゃんは始め言いよどんでいたけど
ゆっくり話してくれた





「朝礼まで時間はあるし 遠慮しないでさっ 僕何でも聞くよ」




俯いてた顔を上げて



「…真琴に嫌われたかも」

「え…?」


一瞬にして
それはありえない!と出かけた言葉を飲み込んだ




スイミングクラブで皆に出会った時
すでにマコちゃんはひなちゃんが好きだった
聞いた訳じゃないけど、というか見ていて分かる
きっと気付いていないのはひなちゃん本人だけだ


ハルちゃんもひなちゃんが好きなのかな、と感じる時があるけど
こっちは確信が持てない



再開してからも全く変わっていない二人の関係に
マコちゃんが若干可哀相に思えたけど
ひなちゃんの隣にいるマコちゃんは
昔と変わらず幸せそうだった





「あたし 真琴と遙とずっと昔から一緒で それが当たり前だったけど もう高校生なんだからそれはおかしいって言われたの」


誰に?
なんて聞かない
大体予想がついてる
彼女へ好意を持っているだろうクラスメイトがいるから




「なんでおかしいのか分からないし 別に離れなきゃいけない理由もないと思ったけど」



僕は黙ってひなちゃんの言葉を聞いた



「あたしのせいで 真琴や遙が自由になれないって 彼女とかも出来ないんじゃないかって 言われて」

「彼女?」

「うん それで 2人の事を大切に思うなら少し距離を置くのも手なんじゃないのかって」




やっと顔を上げたひなちゃんの瞳は
潤んでいた



「だから 少し2人と距離を置いてみようかなって そういう話をしてたんだけど」


再び俯いたひなちゃんは机上に置いた手をぎゅっと握った




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