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ーーー


夕飯の時に水泳部が正式に活動出来る事になった話をしていたら
父親にスイミングクラブの取壊しが決まったと言われた


最後に一目見ておきたいと思い俺は家を出た





階段を降りていると握っていた携帯が震える




「ひなき?」



ディスプレイの『百海ひなき』の文字に何かあったのか?とすぐ通話ボタンを押した




「もしもし」
『もしもし』
「どうしたの?」
『真琴 今家?』
「いや 今外なんだ」
『そっか』
「どうしたの?」
『ううん 何でもない ごめんね』
「何でもない事ないだろ もしかして また虫が出たとか…」
『ちっ、違うよ!』
「だよね もしそうなら泣いてるはずだし」
『泣かないよッ』
「あはは」
『からかわないで』
「ごめんごめん」



少し沈黙があり、俺は歩くのを止めた






「何があったか気になるなぁ」


明るめの声で言ってみると


『今日お母さんから聞いたんだけど スイミングクラブ取壊しが決まったって』



段々と声が小さくなっていくひなき



「俺も今日父さんからそれ聞いたんだ それで 今からスイミングクラブ見に行こうかなって思ってたんだけど 一緒に行く?」
『ホント?いいの?』
「いいよ 今から迎えに行くから家にいて」
『うん!』





















ーーー


「こんばんは」
「こんばんは ひなき〜 真琴ちゃんが来たわよー」
「はーい」
「遅くならないようにね」
「はいはい」
「真琴ちゃんよろしくね」
「はい」
「大丈夫だってば じゃあ行って来まーす」
「行ってらっしゃい」






辺りは暗く、いつもと違う雰囲気に少し緊張する
心なしかひなきとの距離も近い気がする


半歩前を歩くひなきの右手を見ながら、繋ぎたいって考える

いや、決してやましい気持ちとかじゃなく!
足元暗いし危ないからッ




ーーガサッ



「きゃっ!!」
「ひッ?!」
「なななななんかいるぅ」
「えッ?!」


近くの植木から音がしてひなきが悲鳴を上げて
俺も驚いて固まってしまった



「い、今 そこからなんか…」
「なんなんだよ〜」




にゃぁ〜




「……」
「……」



ただの猫だった


そして今更ながらひなきに抱き着かれている事に気付く







「なんだ猫かぁ」
「えっと…ひなき」
「ん?あッ!!」




胸が腕に強く当たっていて
直立不動のまま視線だけそこへ向けた



ーーー
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