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消えた謝罪の言葉と声
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部屋に戻ってきた真斗は部屋の違和感に気づく。レンの荷物が少ないのだ。


「神宮寺も俺を…」


直接真斗に言葉を言ったレンも今はどんな状態であれ会いたくないのだろう。


「…俺、だけでも…練習を…」


レンが帰ってきたときのために自主練習をしようと曲を流し始めた。が…


「…っ…!?」


声が出なかった。というよりも、この歌を歌うことができないらしく始めの音もすぐに出せない。


「な、何故だ…」


とにかく今の状態では歌えないためST☆RISHのメンバーに会って謝罪しなければならないのだが、足が重く謝罪の言葉を考えたときに喉の奥が詰まってしまう。


「俺は…デビューできないな…」


トキヤと那月は自分に何も言わなかったが、もしかしたら自分に嫌な印象を持ってしまったかもしれない。そう思うと音也にも翔にも近づく術がない。つまり謝ることができない。


「実家に戻る、か…?」


自己嫌悪を続けるうちにもうアイドルに"なれない"と決め付けた真斗は究極の2択に迫られた。


「謝ってデビューするか…諦めて実家に帰り、後継ぎになるか…」


着物に着替えながらそんなことを考えていた。だが、どちらにせよ自分が後悔することは間違いないのだ。今アイドルにならないで実家にのこのこ帰れば父親からどんな罵倒を浴びせられることだろう。謝ったところで皆がもう一度メンバーとして迎えてくれるかもわからない。

なんの考えも纏まらないまま授業にも出ずに部屋に引きこもった真斗は誰にも心配されずに孤独な1週間を過ごした。



「なぁ…ST☆RISHの曲さ、5人で歌わねぇか?」

「え…?」


急な翔の言葉に音也が疑問の声を上げる。


「音也だって、それのほうがいいだろ。変に怖がるより」

「そう…だけど…」

「じゃあ決まり。ST☆RISHは5人曲で仕上げるぞ」


怒りで真斗の印象が最悪な翔は罪悪感も感じないようだ。



こうして真斗は翔が指示したST☆RISHの方向性によって他のメンバーが真斗をフォローすることも許されず、完全にメンバーから外されてしまった…。

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