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開く距離感
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「音也、待ってください!」

「…トキヤ…?」


トキヤの呼ぶ声に足を止めて振り向いた音也は酷く傷ついた顔をしていた。


「!…大丈夫ですか?」

「…マサに…嫌われちゃったかな…?」


トキヤが聞くと音也はいつもの明るい口調ではなく、掠れる程か細く小さな声で落ち込みながら言った。


「理由は私にはわかりかねるますが、大丈夫ですよ」

「っ…うぅ…!」


優しく声を掛けてやると音也は我慢していた涙を溢れさせて崩れ落ちた。よしよしとトキヤは背中を摩ってあげた。



「んあぁ〜っ!!イライラが収まんねぇ!!」

「……」


部屋で大暴れする翔を那月は黙って見ていた。翔は那月のぬいぐるみを投げたりしていて、那月は真斗のことを信じれなくなっている自分が嫌で考え込んでいるようだ。


「俺達だって焦ってるのによ!!」

「わっ…!」


自分が散らかした那月のぬいぐるみを振り回していたら手から飛んで那月に当たってしまった。


「那月!ゴメっ…」
「いい加減にしろよ…」


謝ろうと近付いたそこには那月ではなく砂月がいた。


「暴れたって何も解決しねぇだろうが。落ち着け!」

「…ちくしょう…」


砂月に言われて図星な翔は顔を歪ませて呟く。



レンは湖のほとりで木に寄り掛かって歌詞を考えていた。


(聖川を怒らせたの…原因は俺だよね…)


自分が練習をするときに歌詞を書き終わっていなかったせいで真斗が怒った。更に1年しか期間がない焦りも出たせいで音也にも当たってしまった。


「はぁ…今日はイッチーの部屋に泊めてもらおうかな…」


歌詞を考えようにも先程の出来事が頭にリピートして集中できないため作業を中断したレンは僚に向かって歩きだした。



「俺は…何をしていたのだ…」


一人になってからも座り込むこともせず立ったまま呆然としていた。音也の傷ついた顔、台詞…慌てて追いかけて行ったトキヤ…友達を傷つけられ、真斗の理由を聞いて怒った翔…落ち着かせるために連れて行った那月…今の自分と練習できないと出て行ったレン…。5人とも真斗から離れていった。孤独になった真斗は頭の整理が上手くできずに行動することができない。


「皆に謝らなければ…」


どんなに考えが纏まっても身体が動かない。5人に会うのが無意識に怖いと思っているらしい。寮に帰ろう、そう思った真斗はレコーディングルーム内を片付けて外に出た。
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