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□裏切りと居場所
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ホームルームが始まった。いつもであれば真面目に連絡事項を聞くのだが、今日は違った。女子生徒の友人――秋村風香(というらしい)の言う地獄とは何なのか。気になって仕方ないのか月宮先生の話が頭に入ってこない。


「まぁ君、まぁ君?」

「は…はい…!」

「大丈夫?何か悩み事?」


月宮先生が俺のことを呼んでいたらしい。気付かなかった俺は慌てて返事をした。ボーッとしていた理由を聞かれるが、"何でもないです"と答えた。なぜなら、秋村の方から並ならぬ視線を感じたからだ。その光景を、真斗じゃないだろうと思うが疑ってしまう音也と那月は心配そうに顔を見合わせていた。



放課後になったが部屋に帰りたくない。秋村に上手く使われた神宮寺のいる部屋に戻りたくなかった。まだ時間的に神宮寺は帰ってきていないだろう。その間に明日必要な物と入れ替えてレコーディングルームで一晩を過ごそうと決めた。寮に向かう途中、どうしても昨日の事、今日の事があっては周りの視線が気になってしまう。廊下で擦れ違うのもバッタリ会うのも今の俺には少し怖かった。

かばんの中身を入れ替えて予定通りにレコーディングルームへ来た。Aクラスには今日、アイドルコースの生徒に課題が配られた。ついでではないがここで練習していこうと音源を流す。今回の曲が曲調が少し暗い。歌詞を考えようと思った矢先、俺が一番気になっていた事柄を放棄してきてしまった事に今更のように思い出せば曲を止め、レコーディングルームを出て鍵を閉める。図書館に行ったと思わせようと本を2冊借りて教室に向かう。


「あ、帰ってきた。教室から出てったから逃げたのかと思ったわ」


皮肉の言葉を吐く秋村に苛立ちを覚えるもここで言い返したら負けだと言葉を発するのをやめた。


「ふ、風香ちゃん…やめよう…?」


昨日も今日も口を開かなかった女子生徒――松原寧々は秋村を止めに入る。松原もクラス全員の前で自分の事について話されるのは心地好くないらしい。


「ダメ。犯人を突き止めるんだから」


制止されようともやめない秋村に松原は困惑している。


「さ、始めようか…地獄のアリバイ調査」




続く。
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