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□不信感
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ため息をつきながら寮へと帰ってきた。珍しく神宮寺は早く帰ってきていたようだ。


「おかえり。どうしたんだい?」


あまりにも酷い顔をしていたらしい俺を見兼ねて神宮寺が話しかけてきた。悩み相談として相手を頼る事をしたくなかったが、今はそれどころではなく素直に今日あった事を話した。


「ふーん…レディがね…」

「俺はそのくらいの時間、何をしていたか覚えていない」

「お前は確か外の空気を吸ってくるとかで外出してなかった?」


神宮寺の言葉にドキッとする。女子を襲うなどという事はしないと断言できるがその時の記憶がない以上は何とも言えない。


「夜風にあたりながら歌を…歌?」

「あぁ、歌声聴こえてたね。あれ、お前のMostフォルティシモだっけ?」


神宮寺の言葉に安心した。ようやく昨晩の記憶を思い出せたのだ。


「歌声が聴こえなくなって5分くらいでお前は帰ってきてたよ」


俺のアリバイは何故神宮寺が知っているのかわからないがはっきりしていた。明日、皆の前で公言すれば認めてもらえるだろうか。


「まぁ…複雑そうだけど、良い方向に向かうといいね」

「あぁ」


相談に乗ってくれた神宮寺に感謝して俺はすぐに眠りに付いた。



翌朝。俺はホームルーム前に言おうと声を張り上げた。


「やはり、そこの女子生徒の件は俺ではないぞ」

「嘘。証拠は?」

「神宮寺が言っていたのだ、昨日は夜風にあたりながら歌を歌っていたと」

「…それで?」


俺はアリバイを聞いたまま話す。だが、女子生徒の友人はニヤリと笑っていた。


「…?」

「おかしいと思わなかったんだ。あんたの事を好かない神宮寺さんが相談に乗ったこと。それと…詳しい事情を知ってる事」

「まさか…」

「先に吹き込んでおいたの」


勝ち誇ったような笑みを浮かべて言う女子生徒にゾッとしたのと同時に神宮寺への不信感が湧いた。


「後であんたに地獄を見せてあげる。楽しみにしてなさい」


嫌な笑みを浮かべたまま女子生徒の友人は席に着く。俺は周りの"可哀相な人を見る目"に堪えられず気にしないようにして自席についた。



続く。
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