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□喧嘩のち仲直り
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「那月なんてもう知らねぇからな!」
「待って!翔ちゃんっ!」
昨日、那月と喧嘩した。いや、俺が一方的に怒っただけかもしれない。那月の事…傷つけちまったかな…。
「はぁ…」
ため息が止まらない。部屋から飛び出した俺は音也とトキヤの部屋に泊めてもらったが、教科書もヘアピンも制服も何も持たずに出てきてしまった。だから、今日の授業は…仕方なくサボり。無断で憧れの日向先生の授業を休むなんて後悔でいっぱいだ。
「那月…」
どれだけ時間が経っただろう。そして何度那月の事を考えて罪悪感を感じただろう。気付けば夕方になっていた。
今日もまた音也達に泊めてもらう訳には行かないためレンと聖川の部屋に泊めてもらおうと寮に向かって歩き出した。
「身体…だりぃ…」
食事も取らないまま朝から今まで中庭でベンチに座りっぱなしだった俺はふらついていて足も覚束ない。
「…っ…!?」
突然、俺がよく知った痛みが胸に走って膝まずく。痛みの正体は俺の身体を蝕む持病の発作だった。
「ぐっ…ぁ…!」
嫌な汗をかきながら痛みに堪えられず倒れ込んだ。必死に声を出して助けを呼ぼうとした。だが息を吸い込もうとしても上手く呼吸できずに喉を締め付けてしまうばかりで声が出ない。
「はぁっ…那月…」
だんだんと収まってきて意識が朦朧とするのにも関わらず考えるのは喧嘩した相手、那月だった。
「はは…、自業…自得…」
俺が酷く傷つけちまったんだ…助けに来る訳ないよな…。
暗くなった空を横目でちらっと見て俺は意識を手放した。