およそ一生なんて

□第35話
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-名無しさんside-



その日の放課後。

あかねも夜出かけちゃうからさゆりとゆかと三人で映画を見に行った。

それはそれは純愛ラブストーリーで。



なんか、ぼーっとするな…



つまらない訳じゃないけど、なぜか頭に全く入ってこない。


お昼のことがあったから?


いやいや、違う違う。



1人で悶々としながら、映画は見終わり二人はすごいうっとりしちゃってる。



さ「素敵ねー!女の夢だわー!」

ゆ「ヒロインを追ってくる男…」

さ「踏まれても蹴られてもただ一途に一人の女を追い求める!」



あーあ、まだ夢の中だ。



『…』

ゆ「名無しさん、あんたにはほんと潤いがないわよね〜」

『潤い…?』

ゆ「もー!何も感じないの?あのラブシーン見て」

さ「そうよ!あの厚い胸板、他人の温もり」

ゆ/さ「きゃーー///」



厚い胸板…

他人のぬくもり…



なぜかふいにお昼時間に乱馬とシャンプーが抱き合ってたのを思い出した。



『なんで今…』

さ「ん?」

ゆ「?」



ぼそっと言った発言に2人はあたしを見る。



さ「ていうかさ、名無しさん。ずっと思ってたんだけど…元気ないよね…?」

ゆ「あたしも思ってた!大丈夫?」



心配する2人はあたしの顔を覗き込む。

それをぼーっと見ていた。



ゆ「ねぇ、もしかして、熱あるんじゃない…?顔、真っ赤だよ…?」

さ「ほんとだ!大丈夫…?」



さゆりがそっとあたしの額に手を添えた。


あぁ、冷たくて気持ちいいな。



さ「ほらー!すごい熱いよ!」

ゆ「早く家に帰らないと!あたしたちも一緒に行くからさ」

『ごめんね、ありがとう…』



2人に付き添ってもらいながら家に着いた。



さ「ごめんくださーい」



さゆりの声が玄関に響き、「はーい」と中からかすみお姉ちゃんの声がした。



か「あら、どうしたの名無しさん…」



ドアを開けた瞬間に心配する表情が目に入った。



ゆ「遊んでたんですけど、熱でちゃったみたいで…」



もうお洒落してて出かける準備は万端なかすみお姉ちゃんにあたしの身体を預けながらそう話した。



か「あら、ほんと。熱いじゃないの。大丈夫?」

『うん、大丈夫だよ』



笑って言ったけど、不安な表情は変わらず、後ろからなびきちゃんとあかねもパタパタやってきた。



あ「あれ、さゆりとゆか??」

ゆ「あかね…」



不思議そうに2人を見たあと、あたしを見た。



あ「え、ちょっとどうしたの名無しさん!」

な「朝は元気だったのに…」



3人で身体を支えてくれる。

申し訳ない気持ちでいっぱいだった。



あ「とりあえず名無しさんは引き取るわ。2人ともありがとう」

さ「うん…名無しさんお大事にね」

ゆ「お大事に…」

『ありがとう』



2人を見送ったあと、支えられながら居間に。



お家に着いて気が抜けたのかどっと身体が重くなった気がした。


はぁ、とため息を着いて冷静に周りを見るといつもと違う服を着た3人が改めて目に入る。



『ごめん、そうだ。もう、出かけるんだよね、ごめん』

あ「いいのよ、気にしないで」

『あたしはもう、大丈夫だよ。ゆっくり寝てるから』

あ「でも…」

『大丈夫、大丈夫』

な「一応、乱馬くんが帰ってくるまで一緒にいた方がいいんじゃない?」



「そうね…」とかすみお姉ちゃんが頷く。

学校出た時にはもう乱馬の姿は見えなかったけどいつ帰ってくるか分からない。

せっかくのお出かけが遅くなっちゃう。



『ほんと、大丈夫だよ。きっと乱馬もすぐ帰ってくるから』



危ないわ、とすごく心配してくれたけどとりあえず説得してなんとか出かけてくれることに。



か「ちゃんと戸締まりするのよ?」

『うん』

か「いってきます」

『行ってらっしゃい。気をつけてね』



居間から出て、やがて玄関のドアの鍵が閉まる音がした。



『はぁ…』



乱馬は…

シャンプーと居るのかな。

当分帰ってこないかも…



『はっ…はっ…くしゅ!』



うぅ…風邪なの、かな…

ちょっと…寒くなってきたかも。




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