およそ一生なんて

□第31話
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-名無しさんside-




『あ!ちょっと待って乱馬!』

乱「あー?またかよ…」

『いいじゃない少しくらい』



クリスマスイブの買い出しにじゃんけんで負けて乱馬と二人、イブの街を歩いてるわけだけど。



『見て乱馬!これ可愛くない!?』

乱「おい、そんな道草してる暇あんのかよ。俺だって好きで買い物に付き合ってるわけじゃないんだぜ?」

『仕方ないじゃん。じゃんけんで負けちゃったんだから。どうせならイブの街を楽しもうよ。ね?』

乱「…ったく」

『もう。乱馬は夢がないんだから』



呆れている乱馬にそう言うとニヤニヤした顔で小さいオルゴールを見ているあたしの顔を覗き込む。



乱「ほー?じゃあその名無しさんの夢とやらを聞かせてもらおうか」

『えっ…えーと…』



突然の質問にしどろもどろになる。



『だ、だから…』

乱「んだよ?」

『そのぬいぐるみとか、ハンカチとかオルゴールとかさっき街で見た靴下とかバックとかマフラーとかカードとか』

乱「あのな。それをぜぇんぶプレゼントにもらえるといいなぁ、とかいう夢じゃねぇだろうな」

『あははははは……』

乱「……」

『…うん、そう』

乱「…だと思ったぜ」



さっきからあたしをバカにして。



『じゃあなによ、乱馬には欲しいものないっていうの?』

乱「俺が…欲しいものかぁ…」



上を向いて考えている乱馬が視線だけあたしと合った。



乱「言ったらバカにされるから言わねぇよ」

『えっ、じゃあ乱馬にも欲しいものはあるんだ…』

乱「俺だって人間だぜ?欲がないわけねぇだろ。んまぁ、それが物欲かは別としてな」

『ん?どういうこと?』

乱「なんだっていいだろ。行くぞ」

『あっ、ちょっと待ってよー!』



質問の答えになってるんだかなってないんだか。

乱馬にも欲しい物があるなんて思いもしなかったからびっくりした。

最後の言葉は意味深だけど。





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