およそ一生なんて
□第26話
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-乱馬side-
乱「ん…やべ…」
結構長い時間起きてたのにいつの間にか寝てた。
そして後ろを向けばこっちを向いてスヤスヤ眠る名無しさんの姿。
乱「あ…」
ふいに目がいく繋がれた手。
なんかこういうの前にもあったよな。
じじいが一晩ぐっすり眠れるツボを名無しさんに押した時。
…あんとき確か俺名無しさんと……
いやいや、あれは数に入んねぇよな!
こいつ意識なかったし、うん。
一人で納得しているとなんだか一階のほうが騒がしい。
まだ早朝じゃないのか?
そう思って時計を見てみるともう昼近くを針が刺していた。
名無しさんを起こさないように握られた手を一つ一つ外し、静かに部屋を出た。
乱「久々にちゃんと寝れたんだろうな」
こんな時間まで寝てる名無しさんが珍しく、ドアを見ながら呟く。
そして階段を下りていくとなびきが俺を見るなり腕を掴んで居間に連れてこられた。
乱「なんだよ」
な「乱馬くんにお客さん」
そこに座っていたのは鏡屋敷のじいさんだった。
老「これは先日のお坊ちゃん」
乱「どうしたんだ?」
老「実はよい物をお渡しに…」
そういって取り出したのが小さなコンパクト。
乱「コンパクト…?」
老「さよう。これは一見なんの変哲もないコンパクトだが…」
説明している間にパンダ姿の親父がコンパクトを開けて鏡を見た。
老「早めに言っておくが、決して不用意にフタを開けて中の鏡を覗かぬように」
玄[え]
みるみるうちに親父はコンパクトに吸い込まれていった。
老「あーーーーッ!!!!」
乱「親父!?」
老「だから覗くなと言ったのに!!!」
乱「覗いてからいうなッ!!」
どうしたら親父が戻ってくるのかと考えていれば「出すときはさかさに振って」とじいさんがコンパクトをポンポンと叩いたらあっけなくでてきた。
老「よろしいかな、新しいカーテンができるまでの間コピーが悪さをしたらそれに閉じ込めるように」
そういってじいさんは帰っていった。
乱「要するに…このコンパクト、簡易捕獲器みたいなもんか」
いいものが手に入ったと思ったと同時に手の中にあったはずのコンパクトが奪われた。
(乱)「いーもんみっけー!」
乱「てめっ、返しやがれ!」
そのままそいつが向かったのは名無しさんの部屋。
嫌な予感しかしない。
俺が名無しさんの部屋に追いついた時にはちょうど名無しさんが目を覚ましてコンパクトを見た瞬間だった。
『えっ…』
乱「な、名無しさん!」
一瞬で名無しさんがいなくなる。
そのあとすぐにコピーも鏡を覗き込みこの場からいなくなった。
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