およそ一生なんて

□第22話
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-真之介side-




『そんな、悪いよ』

真「俺のことはいいから。早く寝袋入れって」

『…ありがとう』



辺りが暗くなってもう寝るのにふさわしい時間だ。

俺が持ってきた寝袋に入ることを躊躇した名無しさんを何とか説得させた。



真「じいちゃんどこいったんだろうな」

『さっきトイレに行ってくるっていってたじゃない』

真「あ、そうだ。忘れてた」

『ふふっ、ほんとにすぐ忘れるんだから』



寝袋に入り横になる名無しさんを俺も体を倒してみる。



真「物忘れ激しいけど、俺…」

『うん?』

真「お前のこと好きだっていったことは忘れてないからな」



笑いながら言うと名無しさんは顔を少しだけ赤くした。



真「そういう反応見ると引けなくなる」

『ちょ、ちょっと!』



俺は体を横にしている名無しさんに近づいた。

寝袋に入ってるからすぐに逃げられるわけが無くて。





真「ずっとそばにいてくれ」





そっと名無しさんの頬にキスをした。





『し、んのすけ…くん…』

真「明日も早い。早く寝ろ」





そう一言言って名無しさんに背を向けて再び横になった。






初めてなんだ。

人を好きになったのは。


人の名前すらすぐに覚えられない俺。

それなのにいろんな意味で忘れられない人ができるなんて。





もう、離れないで欲しいと

本気で思った。







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