およそ一生なんて

□第8話
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『いじけないの』



頬をつんつんしながら言う。



『手当てしてあげるから』

乱「…」



そう言って救急箱の中身を広げた。

乱馬の顔に絆創膏を貼っていると乱馬はじーっと私の顔を見る。



『な、なに?』

乱「笑いたかったら笑えよ」

『笑わないよ。というより、乱馬に謝らなきゃいけないと思って』

乱「え?」

『私こうなること知ってたのに直前になって思い出したから止められなかったの。ごめんね』

乱「…そっか。知ってるんだもんな」



そして乱馬は少し気まずそうに私に話しかけた。



乱「え、ってことは…」

『ファーストキス、だったんだよね?』

乱「…」



私に背中を向けた乱馬にまだ手当の途中だからとこっちに向かせた。



『地上ならまだしもリンクの上じゃ避けられないか』

乱「…」

『乱馬は慣れてないもんね』



ぺたっと傷口に絆創膏を貼る。



乱「お前、」

『ん?』

乱『俺が戻った時あいつに何かされそうになってたろ』

『え?』

乱「名無しさんに手、伸びてた」



…そうだったっけ。

私が気づかないのによく見てるな。



乱「リンクの上慣れてるはずなのに」

『えっ』



すすっと私の鎖骨に乱馬の手が当たる。

と、同時にふわっと乱馬の膝の上に乗った。





乱「地上でもリンクの上でも

あいつだったらこのままキスされてんぞ」





ぐいっと顔を近づける。





『で、でも目の前にいるの乱馬だもん』


乱「…俺ならされねぇって?」





私の知ってる、シーンじゃない。

私の知ってる、



乱馬じゃない。





『…だってする理由がない』





一瞬沈黙が出来る。







乱「する理由…」







前髪で乱馬の表情が見えない。







乱「あるって言ったらどうする?」



『え…?』







静かな道場。

私の心臓の音が聞こえてしまいそう。







乱「ほんと、鈍すぎ」







そういうとそっと顔を近づける。



うそ、

このまま、乱馬と…





拒むように乱馬の胸を押すが、動かない。


もう一度グッと力を込めようとした瞬間、





突然私は腕を誰かに引っ張られ目の前の乱馬と引き離された。



いや、引き離されたというか…

目の前の乱馬がふっとばされたっていうのが正解かもしれないけど。




乱馬はハッとして、




乱「なっ///」

良「き〜さ〜ま〜…殺すっ!!!」

乱「良牙ッ!?」




…良牙が吹っ飛ばしたのね。

そこから2人のケンカが始まった。


ほ、本当にキスするのかと思った…




漫画の中の乱馬と違う。

こんな乱馬、私は知らない。



私も私だ。

ちゃんと拒まないといけないのに。


あかねと乱馬の為に。








『はぁ…ちょっと外の空気吸ってこよ』







2人がケンカをしている中、私はそそくさと道場をあとにした。



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