短編・歌詞

□白西
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ブーッブーッ…
西「…もしもし」




白『もしもし…七瀬?』




西「まいやん…どーしたん?」




白『まぁ、その…ちょっと暇になったから、電話したんだけど…大丈夫だった…?』




西「んー…まぁ、」




白『ダメだったら、切ってもいいよ?』




西「今…彼氏とおる」




白『っ…そっか。彼氏出来たんだ』




西「うん」




白『どんな人?』




西「んー…まいやんみたいに一緒にフェスで大はしゃぎしないタイプかな?」




白『プッ…馬鹿にしてる?(笑)』




西「してへんよー(笑)」




白『そっか…』




西「余裕があって大人で、優しい人やで」




白『そーなんだ。俺とは違うね』




西「うん、そーかも。あ、あとな、まいやんみたいに映画見ててななより泣いてることもせーへんよ」




白『ったく…すぐにバカにしないでよ(笑)』




西「まいやん、ギャップ凄いからなぁ(笑)初めて会った時と今のイメージ全然ちゃうもん」




白『アハハッ、そーだね』




西「まいやん、今の彼氏な?なんでも知っててホンマに尊敬できる人やで」




白『そっか…じゃあ、』




西「うん、安心して…」




白『うん、よかったよ』




(七瀬?誰と電話してるの?)




西「あっ…友達やで」




(そっか、)




白『じゃ、電話切るね』




西「うん…」




白『七瀬、幸せになってね』




西「ありがと…」




白『おやすみ』




西「おやすみ…」



電話を切れば、彼氏がななの隣に座った。突然かかってきたまいやんからの電話。3ヶ月ぶりに声を聞いた。元気そうでよかった。ななとまいやんが別れたのは、3ヶ月前。高校を卒業と同時に、ななが大阪に帰ることにしたから。おじいちゃんの体調があまり優れず、両親は仕事が忙しかったからななが行くことに。行きたい大学も大阪にした。遠距離はお互いできないって話になり、別れを選んだななたち。別れてから少しして、ななは同じ大学で新しい彼氏が出来た。とても優しくて、そこが何だかまいやんに似ていたから付き合うという形を選んだ。



(七瀬)




西「んー?」




(今の、男…?)




西「うん…」




(元カレとか…?)




西「…ただの友達やで」




(そっか…)




西「心配してるん?」




(…しゃーないやん、七瀬モテるし)




西「大丈夫やで(笑)」




(七瀬…)




西「ん?」




(好きやで…)




西「…ありがと」



今の彼はキスや態度だけで終わらせたりしないでちゃんと「好き」と言葉でくれる。まいやんは、突然キスしたり、突然抱きしめたりばっかりやったけど。それに、まいやんとしてた怒鳴り合いもなければ、口喧嘩もないんやで。こんなにいい彼氏、いるんやなって思ったで。



やから、もう会えへん


ごめんな、まいやん


まいやんも早くなってな


別の人の彼氏に



って、彼が寄り添ってきてななが彼の頭を撫でながらいつも思ってる。



これで良かったんや。



ななたちは別れて、正解なんや。



遠距離で付き合うなんて、出来なかったんや。



出来なかったんや、きっと…








西「はぁ…」



毎朝、彼が起きる前に鏡に向かう。まいやんの時みたいに、すっぴんだって笑っていられることは出来なくて。一生懸命お洒落して、彼の隣に合う彼女を演じてる。

それに、まいやんの時みたいに大きな声でバイトの愚痴を言うようなななではなくなってしまった。それをすると、少しだけ怒られんねん。「そんなこと言ったらあかんやん、仕事なんやから」って。



(七瀬、チャンネル変えよ)




西「え?」




(俺嫌や、この番組)




西「なんで?」




(若者が夢とか希望とか語ってるの好きやない。だって、そんなんあくまで夢やんか。ちゃんと現実見た方が成功するやん。)



彼は正しいことしか言わない。何も言い返せない。やから、ななは大人しくしてるの。


−ねぇ、七瀬
−んー?
−夢ってある?
−夢?んー…ないかなぁ
−俺はあるよ
−なぁに?
−歌で有名になって、それで七瀬と結婚する
−フフッ、叶うん?
−歌は叶わなくとも、七瀬とのは絶対に
−そっか、ええ夢やな
−でしょ?誰にも負けないくらい幸せな夢
−応援するな?
−えぇー、応えてよ〜
−頑張る〜(笑)


(七瀬?)




西「え、あ…」




(大丈夫?疲れてるんちゃう?)




西「そーかもしれへん」




(寝てええよ?)




西「うん、ありがと」



そう進められ、ななは1人ベッドへと向かった。ロフト付きの部屋。彼の部屋にななは一緒に住んでた。テレビの音は聞こえるけど、彼の顔は見えない。やから、ななが泣きそうな顔なんて見えないんや。

きっと、この涙が毎日流れるのであれば、なな達の関係は終わりを迎える。彼が寄り添ってきて思っていること、まいやんに早く彼女ができるようになってって。もちろん、そう思っとる。でも、ななはずるいから…ななから別れを告げたのに…


もう、会いたい。



ごめんな、まいやん。



なな、まいやんに会いたい。



ずるいよな?



わかっとる。



まいやん、ななが



別の人の彼女になったように



別の人の彼氏になって。



西「まい、やん…」



ななから電話しちゃう前に。

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