短編・歌詞

□白西
1ページ/2ページ





西『まいやん、病院行くで〜』




白「はーい」



今日は定期検診の日。
彼女のお腹がどんどん大きくなって行く。
どこか嬉しくて、
でも、どこか悔しい。


今から宣戦布告を
心の中でまだお腹の中にいる
赤ちゃんにする。

二人の子供に
きっと私は嫉妬すんだよ。
きっとそうだよ。

ずっと七瀬ばっかで、
笑顔を向けるのも
私ではなく赤ちゃん。

あぁ、もう想像つく。

それに、
彼女と血が繋がっているなんて
なんて羨ましいやつなんだ。


おとな気なんてこれっぽっちもなく
耐えられなくなって頬を濡らす
仕事終わりの夜。


七瀬に
『どーしたん…?』
って聞かれるけど
本音を言えば笑われるから
言わないでいるんだ。



(順調ですね)




西『フフッ、よかった』




(もう少しで予定日ですので、お身体の方冷やさないようにしてください)




西『はい』



病院を出て、家へと帰る。
ご飯食べよーって言ってくるけど
そんなこと後でいい。


今はとにかく、赤ちゃんに
宣戦布告するんだもん。


ソファに腰掛けた彼女の隣に座り
優しくお腹に触れる。



西『もうすぐやなぁ』




白「そーだね…」



初めて顔を合わせたら
根掘り葉掘り生まれて間もない
君に私は尋ねてみたい。


ママのお腹はどうだった?
私が見れない景色はどうだった?
って。


さぞ素晴らしい、さぞ美しい
十月十日の旅だったんだろう。


私よりも彼女を知っている。


そんな君が嬉しくて、
でも、どこか悔しくて…


でも、私も負けてばかりもいられない。
よちよち歩きも
おぼつかないんだろうけど、
我が子だろうとそこは手を抜けない。


正々堂々と父親と長女の勝負をしよう。


絶対に君には
子守唄なんてもんも
読み聞かせるような本も
必要ない。
おとぎ話なんていらないよ。



君が産まれるまでの
ママの話をしてあげよう。



この世のどこにもない物語、
私の人生を。



時に喧嘩したり、
振り回されたり、
眩しすぎるってくらい
キラッキラにしてくれたり。



出逢うまでの私の日々を
ただの予告編に。



全部独り占めにしたがりの
君のママの作戦に、
まんまと私はかかったんだよ。



いつか君も分かるよ。



全部使ったんだ、一生の運を。

あの時、きっと。



一生分ぎゅっと詰めても
やっといけるかいけないかくらいの
ラッキーの使い道と使いどころを
私は知ってたんだ。



こればかりは自慢するよ?
凄いだろ!って。



彼女はいつだって私のだから。
それは君も心に留めておいてよ。



どんな時も
絶対に例外なんて認めないからね。
私が初めてたてた誓いなんだ。



でも、そんな誓いを
初めて破ったやつがまさに君だよ。



西『まいやん?何してるん?』




白「んー?内緒〜」




西『フフッ、変なのー』



彼女のお腹に耳を当て、
君の声を聞く。



今から反論なんて許さないけどね。



これから言うこと、よく聞いて?
2回は言わないよ。


あんまり多くを君に語るつもりはない。



強くいろ。
でも、そういう意味じゃなくて、
もっと深い意味でね。



私はいつだって君を愛すよ。



もちろん、ママの『次に』だけど。



絶対にそれだけは譲れないんだ。



温もりが足りなくなったり、
心細くなるときも来るかもしれない。



そんな時は、触れる事が1番なんだ。



抱きしめてあげるから。



それだけは保証するよ、娘よ。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ