短編

□大好きな音
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カキーンッ…!



教室で小説を読んでいれば
窓の外から聞こえる音
ななはその音を聞くのが好きだった




そんな音、気にはならないと
前はずっと思っていた

でも、ある日を境に
その音が好きになった







3年生になり
教室が1階になった
ななは
放課後、窓を開けて
陽の光を頼りに
小説を読むのに
ハマっていた

陽の光、
暖かくなってきた春の風、
放課後の1人の教室、
ななにとって
最高の場所やった




「おっけーい!!」




ふと、そんな声が聞こえて
外を見てみると
ソフトボール部が
練習をしていた


こっちに走ってくる彼女


ジャンプして
宙に浮いているボールを
キャッチした


ポニーテールを
なびかせながら
ボールを取る
その瞬間は
今まで見たことのない
迫力だった



「うわっ!!」



カッコイイって思った束の間
彼女はバランスを崩し
草木に背中から落っこちた



西「だ、大丈夫ですか…?」



あまりにも
すごい落ち方をしたから
心配になり
窓から身を乗り出して
声をかける



白『うおっ!
見られちゃった!』




西「へっ…?」




白『アハハハッ、恥ずかしい(笑)』




怪我はなさそうだ
そんな笑顔を見たら
ひと安心した




白『てか、見てた!?
私のスーパーキャッチを!』




西「は、はい…」




白『レフト苦手なんだけどさ
なんかやらされてて
悔しいからすごいとこ
見せてやろうと思ったら
コケちゃった(笑)』




西「か、かっこよかったです…」




白『マジで!?
ちょー嬉しい!』




(白石!!早く戻ってこい!)




白『うげー…
また怒られるよ…』




西「フフッ、
もう少しだけ見てもいいですか?」




白『もちろん!
いっぱい見てて!』




西「うん、」




白『じゃーね!』




その日、
ななは小説を読むのをやめて
ずっと窓の外を見ていた











白『あっ!なぁちゃん!』




西「まいやん、
部活行かなくてええん?」




白『そろそろ始まるけど
気にしなくていいよ!』




西「自由やな(笑)」




白『あ、聞いて!
今度の大会、
ファーストになったの!』




西「ファースト?」




白『そっ!
一塁って言えばわかるかな?』




西「あー、あそこ?」




白『そう!
1番ボールが集まるところ
結構重要なんだー』




西「すごいやん!」




白『フフッ、だから
絶対勝つね』




西「うん、楽しみにしてるな」




白『うん!』




(まいやーん、そろそろ始めるよー)




白『ありゃ、もうそんな時間か
行ってくるね!』




西「行ってらっしゃい
頑張ってな?」




白『ありがと!』




そう言って
手を振っていく彼女に
手を振りながら見送る



部活になると
表情が変わる彼女



そんな彼女を見るのが好きやった
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